LOG2

□二月の魅力
1ページ/1ページ


(お題:彩街様より)





ロクに手入れなどしていない筈の髪は、陽光をうけてまばゆい。
長い睫毛に縁取られた瞳は深い海を思わせる青。
整った面立ちはそれこそ腕の良い彫刻家が鑿を存分に揮った芸術作品のごとく、だ。もちろん顔だけでなく、その鍛え上げられた身体も。
つまりここに人間が十人居たとしたならば、その十人ともが男女関係無く見惚れるような男なのだ。
ただし、黙ってさえいれば。

「おーい、晩飯まだかァ? あ、タマネギ入れンじゃねーぞ」
「さっき昼飯食ったばっかでしょーが!」
昼食の時間帯に乱入してきた元上司は、そのままどっかりと居座っていつものごとくわがままだ。
ボケ老人なんだか、ガキなんだか、判別し難いそのわがままな要求にとりあえずは短く応じたが、すぐに返されるのはやはり減らず口。
うるさいことこの上ない。
「すぐ腹減るンだもんよ、育ち盛りだし」
「アンタ島の人間の中じゃ、どう見てもブッちぎりで育ちきってるだろ!」
「お隣さんは俺よりオッサンじゃねーか」
「近藤さん三十代っすよ」
「え」
「え」
「……アレ、三十代?」
「ハイ。あと聞かれる前に言っときますケド、トシさんは近藤さんのひとつ下っす」
うそだろ、と心底驚いた顔で小さく呟く隊長はと言えば、五十路手前。少々ショックであったらしい。
だが今の会話の中で、ふと気付いたことをそのまま口にした。思えばこれがいけなかったのだが。
「隊長、自分がオッサンって自覚は一応あるンすね」
「……そのオッサンについさっき見惚れてたのはどこのどいつだ?」
ビクリと体が強張る。
おやつに使うための生クリームを掻き混ぜていた泡立て器が、ボウルと擦れて耳障りな音をたてた。
さっきまで、窓から差し込む光の下でぼんやりと煙草を吸っていた隊長。それを昼食の後片付けをしながら、こっそりと、眺めていた。つもりだった。
「あ、あ、あれは、その、」
「リッちゃんはどォしてこんなオッサンに見惚れてたんだ? ん?」
意地の悪い顔で、近付いてくる。
ああ。
この生クリームはもう、おやつには使えないかもしれない。


【結局、こうなるかなって】

――――――――――

そういや近藤勇は幾つで斬首されたんだろう
→調べたら満33歳没
→やばい隊長より遥かに若い

という流れの思いつき

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ