LOG2

□Sagittarius
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zodiac


「隊長がいなくなったァ?!」

ヘッドセットから雑音混じりに聞こえてきた、同僚からの信じ難い報告に目を剥いた。だって今は任務中だ。その、任務を指揮すべき隊長が居なくなったなどと言う。

『あーリッちゃんこーゆー事ハジメテだっけ? たまにあんのよ、あの人。援護に出るーとかって言ってブラッとね。援護なんか要らないの分かり切ってンだから、つまり暇潰しってコト。適当に眼魔砲ブッ放してくるから気をつけてねー?』
「は?! ちょ、眼魔砲適当にだとか危な過ぎンだろ……ってオイ、ロッド?!」

不穏な情報に慌ててがなり立てるも通信は既に切れていた。何なんだよ、と悪態を吐きながらもう一度回線を開こうとしてその手を止める。
ザ、と一瞬だけ。
耳元から聞こえたノイズ、その違和感に。

「――!」

気付いた瞬間には地面に伏せていた。
ほぼ同時に直上を突き抜ける、青。
いつもは奇麗だと思ってしまうその光も、今はただただ恐ろしいばかりで冷や汗が背中を伝う。地表間際を進んだそれは、彼方にあった古ぼけた建物に命中した。
かなり遠かったはずなのに衝撃と爆風が容赦なく襲いかかる。幸いにも大きな破片などは飛んでは来なかったが、代わりに土煙の所為で砂まみれになってしまった。口の中もじゃりじゃりするし、本当、最悪だ。

「なんだ居たのかリキッド」
「居たのか、じゃねーよ! 気付かなきゃ死んでただろ絶対!」
「気付いたじゃねーか。上等上等」

いつの間にやら現れた隊長はそう言って笑うばかりで話にならない。
でも、悪い気はしない、かも。

「あー、ヒマ」
「今ので終わりっすよ」
「マジで?」
「マジで」

真面目にオシゴトしてたのに、横取りして。
そう言って少し拗ねてみる。けれど隊長は。

「まあ真面目だろうが不真面目だろうが、死体の数は変わンねーって。そう拗ねるな」

全く変な慰め方をするもんだから、元からオツムの良くない俺はそれもそうだと妙に納得した。

「しゃーねえ、帰るか」
「うん」

しかし歩き出した隊長の、その進行方向は飛空艦が待機してる所とは真逆だった。
これってもしかして。

「隊長、反対」
「……」
「もしかして迷子だった?」
「……うっせ」

図星か。
ワガママ放題に子供みたいなことするからこうなるんすよ、と。地図を差し出しながら、俺は笑った。



――――――――――

9月:射手座:勝手気まま


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