LOG2

□Scorpio
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zodiac



「何で隊長だけそんな着込んでンすか?」

それはリキッドの純然たる疑問だった。
隊員達の胸元の大きく開いたレザーのそれとは全く異なる、ハーレムの隊服。
「隊長だから」の一言で片付けてしまうには余りに共通点の無さ過ぎる装いだ。

如何にも金が掛かっていそうな深緑のジャケットと、下に着込んだ深紅のシャツ。その首元は真白いスカーフタイがキッチリと締められ、おまけに両手には白手袋ときた。
隊員達とは元より、彼の性格とも(そしてランドでの第一印象とも)真逆過ぎる心証を与えるその格好は一体どのようにして選択されたのか。
本当にただ、不思議だったのだ。
なのに返ってきた言葉は。

「何となく?」

それは無いだろ!――危うくそう叫びかけてリキッドは口を噤んだ。
本気にしろ冗談にしろ、常ならばもう少しマシな返答をするのではあるまいか。これならまだ「隊長だから」と答えてくれていた方がとやかく言い易いだろうに。

何か、聞いてはいけない事を聞いたのか。
それが余りにも唐突過ぎて、咄嗟に取り繕えなかったのか。

「……暑くないっすか?」

夏なのに。
それだけ精一杯言うと彼は、「まあな」と何を考えているか分からない顔で、白手袋に包まれている手に目をやっていた。

「ま、煙草の臭いが手に付かないのはいい」

これだけ部屋に臭いを充満させておいて、なんと説得力の無い言葉だろう。それでもリキッドは、「ふうん」と返事をするだけに留まった。何となく、何となくだが、解ったような気がしたからだ。

それでも、まだ秘密は多い。
明かされるのが楽しみなような、怖いような、複雑な思いで視線を上げればハーレムのそれと絡み合う。
あ、と思ったがもう遅い。

誤魔化しのキスが唇に触れる。
リキッドも、諦めたように目を閉じた。



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8月:蠍座:秘密主義

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