LOG2

□Leo
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zodiac


(何が「ちょっとした会食」だ)

ハーレムは内心で舌を出しながら目の前の皿をただ眺めていた。目線を少し上げればニュースでよく見る顔が並んでいる。
マジックから半ば脅されて列席させられた訳であるが、当然、面白い筈もなく。

「ハーレム。食が進んでいないようだが」

大人しく座っていれば良いと言ったのはアンタだろう――そう言いたくなるのを堪えて「何分急な要請だったので」と他人行儀な口調で返す。
大体マジックも解っている筈だ。
ハーレムが手を止めている原因が、メインである肉料理に添えらているタマネギであるという最高に子供じみた事であると。

「あ。じゃあ俺が食いましょーか?」

そこに突然場違いともいえる声が割り込む。
一斉に浴びた注目を物ともせずに「腹減っちゃって」と言葉を続けるのは、マジックから正式に列席を要請された「友好国の子息」である。

「立場をわきまえろ、リキッド」

ハーレムのその一言に列席者がどよめく。
当たり前だ。言ってしまえば単なる戦争屋の、更には一個部隊の隊長程度の人間が「かの高名な合衆国大統領の一人息子」を不遜に叱り飛ばしたのだから。

「まあまあ。折角の料理が無駄になるのも勿体無い、多少行儀の悪いことだが料理は美味しく食べてもらってこそだよ。ああ、ハーレムには紅茶を」

項垂れていたリキッドがマジックの言葉にみるみるうちに笑顔を取り戻す。
(ここまでが計算の内ってわけか、クソ)
要は政治的なアピールに利用されたということだ。面倒な事だが定期的にやっておかなければ物覚えの悪い連中ばかり、牙を剥かれればそれはそれで難儀な事態になる。
(……結果的にタマネギは食わずに済んだ。それと、知られずに、済んだ)
それはちっぽけなプライドであったが。

複雑な面持ちで口を付けた紅茶は、すきっ腹には少し熱かった。



――――――――――

5月:獅子座:プライド


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