LOG2

□Taurus
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zodiac


山、である。紙束の山、山、山。
もはや連峰と言って差し障りの無いそのいただきの向こうに、獅子のたてがみのような金色がチラチラと見え隠れしていた。
時折うなるような声。
何も知らぬ者が見れば本物の獣が居ると勘違いしてしまいそうだ。

「あの、隊長」

回れ右をして退室したいところだがリキッドは意を決して声を掛ける。
「前門の虎、後門の狼」ならぬ「前門の獅子、後門の蛇」とでも言いたい今の状況では逃げ場などありはしない。

「何だ」

不機嫌だとそれだけで解る声に凍りつく。
けれどそんなリキッドとは反対に、ハーレムは上げた顔に「虚を突かれた」という表情を浮かべた後、にんまりと笑った。

「マーカーの仕業だな?」

リキッドの頬には油性ペンで「Eat Me !」と書き付けられている。それをハーレムは笑ったのだ。

「勤勉の対義語は怠惰ってかァ? とんだ回りくどいご褒美だな」

アンタが普段から真面目に書類を片付けていれば!
――とは言えなかった。リキッドもまた、暫くご無沙汰だった怠惰な空気を欲していたのである。



――――――――――

2月:牡牛座:怠惰


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