桜花舞闘

□黎明録〜第三幕・居候〜
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朝から用があり、私は土方さんの部屋にいた。


「すまねえな。
朝っぱらから、呼び出しちまって。」


『いや、これくらいしか俺は役に立てないから……。』


すると、土方さんは曖昧に笑う。


「男装も、大変じゃねえか?」


『大丈夫。
お風呂とかは大変だけど、それ以外は問題ないし。

ただ、色々と……。』


「どうした?」


『龍之介に、着替え見られちゃって……。
これからは、気をつけないとな……。』


「…………。」


『土方さん?』


「いや、何でもねえ。」


土方さんは咳払いすると、書類の山を積み重ね始める。


『試衛館の皆といる時は、甘えさせてもらおうかなって。
一人称くらいは、女でいたいっていうか……。
総司に、気持ち悪いって言われたし。』


「お前が、【女】として武士を目指してるのを知っていて、男装させちまってんだ。
だが、分かってほしい……。」


『隊内の風紀のためだよね。
山南さんに言われたら、言い返せないからな……。

でも、私は置いていかれなかっただけで十分だから!』


「ありがとうな。」


土方さんは柔らかな笑みを浮かべる。


「それにしても……。」


『ん?』


「いや、あの井吹って奴は……。」


『あのね。
ちゃんと黙っててくれるって。
あの人、嘘とか吐けないだろうから心配になるんだけど。』


「お前が言うなら、そうか……。」


そう言いながらも、土方さんは少し悔しそうな顔をし、すぐに赤くなった。


『どうしたの?』


「何もねえよ。」


土方さんは立ち上がると、襖を開く。


「ちょっと散歩でもするか?」


『仕事は?』


「お前が手伝ってくれたおかげで、だいぶ終わったからな。」


『じゃあ、行く。』


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