空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)

□第三十五訓 慌てるな!クーリングオフというものがある
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「はァ、刀狩り?」



銀時と愛、新八は川沿いを歩いていた。



「そーなんですよ。
最近巷で流行ってるらしくて。
外手人は天人らしいんですが、なんでも宇宙最強を目指して武者修業してるって話です。

実際、エライ強いらしくて、幕吏から浪人まで、相当餌食になってるみたいですよ。」



『へぇー、なんか凄いっすね。』



感心する愛とは反対に、銀時は呆れている。



「宇宙最強ねー。
星が変わっても、男のバカさ加減は変わらねーな。

ロマンだか、なんだかしらねーが、どいつもこいつもジャンプの読み過ぎだぜ。」



「もしかしたら、銀さんや愛さんの木刀も、ねらわれるかもしれないですよ。

だって、あの木刀。
そこらの真剣より、よっぽど名刀ですもんね。
なんでも斬っちゃうし…。
ホントのとこ、アレって一体何なんですか?」



『コレっすか?
そんな凄いと思った事ないや。
で、どこでもらったんだっけ、銀時?』



「だから、ソレはお前。
修学旅行の時にな、洞爺湖に住む仙人に…。」



「どけどけどけどけどけェェ!!」



声に振り返ると、神楽と定春が銀時と新八を踏みつけて、全速力で走っていく。



「スンマッセーン!」



『………神楽。』



「わざとだ。
絶対アイツわかってて、わざと踏んでった…。」



すると、銀時の頭がまた踏まれる。



「待て待て待て待てェェ!!」



『銀時、新八。大丈夫?
なんか、神楽が追われてるみたいだから、助けに行ってくる。』



男は神楽に斬りかかるが、小柄な神楽は器用に避ける。
八百屋の商品が吹き飛んだ。



「うおらァァァ!!」



「ちょっとォォォ!!何やってんの、アンタら。
そのスイカ、なんぼすっと思ってんのォォ!!」



「おばちゃん、つけといてくれィ!」



「スイカ泥棒ォォォ!」



神楽はスイカを持って、逃走する。



「オイ、待て!!
待てというのが、わからんか!」



「しつこい。」



神楽はスイカを投げるが、男に割られる。



「わしの名は岩慶丸!!
武者修業のかたわら、最強の武器を求めて、放浪している。
この世の何処かにあるという、星をも切りさく刀を求めてな。

これまで数多の刀を見てきたが、貴様のその刀。
わしが長年さがし続けてきた妖刀【星砕】と見た!

わしと、その刀をかけて勝負せい!
最強の刀は最強の兵[つわもの]にこそ、ふさわしい!」



男にスイカが飛んでくる。



「くどいわ!」



すると、隠れていた神楽が頭上から飛び降り、勢いに任せて木刀を振るう。



「わたァァァァァ!!」



決まったと思った瞬間、神楽の首に手がかかる。

そして、そのままフェンスにぶつけられる。



「なめられたものだ。
わしが命を落とさぬよう加減したな、小娘…。
だが、玄武族は弾丸さえはじく、鋼の肉体をもつ。
これでは勝てんよ。

この身体に【星砕】が揃われば、わしに敵はない。
おとなしく負けを認め、それを渡せ。
されば、命まではとらんぞ。」




神楽は首を締められながら思う。



「(……ああ、これは罰アル。
人の大事なものを、勝手に奪おうとしたから、神様が私をしばこうとしているヨ。

でも、きいてヨ。神様…。
奴は私にロクに給料もくれないネ。
おまけに私の大事なものも、勝手に奪っていったヨ。
いっそ、この木刀を渡して楽になろうか。)」



神楽の脳裏に、木刀を腰にさす銀時と愛が浮かぶ。



「(いや、待て。
それでは私のしていることは、奴と全く同じアル。

あの年じゃ、銀ちゃんはもう、人格を改善するのは不可能…。
愛に呆れられるのが落ちネ。

だが、神楽。
お前なら、まだ間に合うヨ。
大人になれ、神楽!!)」



神楽は木刀を下に落とす。



「あっ、貴様。なんてことっ…。」



男が下を見ると、定春が木刀をキャッチしていた。



「なに…、は!!」



気づいた時には、もう神楽が背後にスタンバイしていて。



「あちょ!!」



「あ゙っ」



神楽の浣腸により、男は声にならない叫びを上げ、下に落ちていった。



『助けに来たつもりだったけど、役目が無かったね。』



「愛!!」



壁に寄りかかっていた愛が近づいてくる。

愛の手が動いたのを見て、反射的に目をつぶる。



『神楽は大人だね。
銀時の木刀を守ってくれて、ありがとう。』



「怒らないアルか?」



『なんで怒るの?』



すると、定春が帰ってくる。



「よ〜し、よ〜し。
よくやったアルヨ、定春。」



『定春も、ありがとうね。』



神楽は言う。



「……帰って、あやまろっか。
ちょっと、腹立つアルけど。

やっぱりコレは、銀ちゃんと愛の腰にあるのが、一番絵になるネ。」



愛が思い出した様に言う。



『そうだ、神楽。
なんか買ってあげるよ。
木刀のお礼と勝手に返しちゃったお詫び。』



「……いらないアル。」



『え?』



「私は銀ちゃんと愛と新八と定春がいれば、大丈夫アル。
それに、お礼は銀ちゃんからもらうネ。」



神楽の頭に愛の手が、ふんわり乗る。



『私もだよ。』








「ただいまヨー。」



『ただいまっす。』



帰るとテレビがついていた。
そこには例のテレビショッピングが映っている。



「アーウチ!!なんてこった!!
こんな所で、侍にカツアゲされるとは。
今日はジェニファーとのデートだってのに、ついてないよ、シィーット!」



「ジェニファーなんて来ないわよ。
アンタはここで死ぬの、舞蹴!」



「おいィィィ!!
お前。何してんの、こんな所で!!
きいてないよ、コレ。」



「オメー。
こないだ酒の席で、あたいのこと改造人間とか言ってたらしーな、コラ!
あたいが整形したのは鼻だけだって、言ってんだろーが、コノヤロー!!

てめーなんか、この妖刀【星砕】で筋肉ブッ壊して、再起不能にしてやるよ。」



取り出されたのは銀時と愛の木刀と同じものだった。



「こいつはなァ。
辺境の星に生える【金剛樹】と呼ばれる、樹齢一万年の木からつくられた代物でよオ!

今なら特別に、この柄の部分によオ。
好きな文字を入れてやるよ。
しかも十二回払い!
月々たったこれだけで、無敵の侍になれるんだよ!
スゲーだろ、オイ!」



テレビの前に鎮座する銀時は、電話をかけている。



「……いや、いつも通り【洞爺湖】でお願いします。
いや。もう逆に、ずっとそれでいこうかなって思って。」



「…銀ちゃん、何やってるアルか?」



「オぅ、聞いてくれよ。愛ちゃん、神楽ちゃん。
僕、パチンコで大勝しちゃって〜。
それでェ。
こないだ木刀にカレーこぼしてから、くさくてしゃーねーから。
奮発して新しいのをね〜。

愛のもまとめて注文しといたから。」



「え?木刀ってコレ?」



『通販だったの?』



「そーだよ。
新八に言うなよ、ミステリアスな感じにしときたいんだから。

口止め料として、何か買ってやるからよ。
なんだ?酢昆布か?酢昆布だろ?
酢昆布しかねーもんな、お前の青春は。
愛はチョコだよな?
………ん?

なんだ、見ねーと思ったらお前が持ってたの…。」



神楽は無表情で木刀を真っ二つに折る。



「オイぃぃぃぃ!!
なんで折るの!?なんで折るの!?」



「ジョニー。あたい、もう疲れちまったよ。
シェルティーとゆっくり眠らせてくれ。」



『神楽、押し入れで寝よっか。』



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