空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)
□第三十二訓 海の水がなぜしょっぱいかだと?オメーら都会人が泳ぎながら用を足してくからだろーがァァ!!
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いつもの万事屋+マダオ、いつもの雰囲気+マダオ、いつもと違うのは、海にいること。
事の始まりは昨日にさかのぼる。
パチンコで負けた銀時が万事屋に帰ってきた。
「銀さん、またパチンコですか?
いい加減にしてくださいよ。
この不景気に…。」
「またアルか…。
そんなんだから、愛に見向きもされないネ。」
『銀時、大丈夫っすよ、仕事を見つければなんとか…。』
「愛さんは甘いんです。
もっと、コイツには言い聞かせないと。」
三人がそんな会話をしていると、銀時が口を開いた。
「そうだ、海へ行こう。」
「はあ?
銀さん。さっきの話、聞いてました?
金がないんですよ。」
「そうだ、えいりあんをハントして、おいしいご飯を食べよう。」
「ご飯アルか?おいしいご飯アルか?
私、行くアル。銀ちゃんの後ろについてくネ。」
神楽はやる気になった。
「チョコも食べれるぞ。」
『愛、行きま〜す!!』
愛もやる気になった。
「長谷川さんがな、えいりあんに懸賞金がかけられているって言っててよ。
そういう仕事の方が、俺ららしくねーか?」
「……確かに。」
「よし。明日、海でエンジョイしよーじゃねーか!」
「あれ?えいりあん退治は?」
そんなこんなで、万事屋一行はマダオと海に行くことになったのだ。
海の家から焼きそばのいい香りが漂う。
「は?えいりあん退治?
え?ホントに来たの?
あーそォ。アッハッハッ、いや〜助かるよ〜。
夏場はかき入れ時だってのにさァ。
あの化け物のせいで、客全然入らなくてまいってたのよ〜。」
マダオは海の家のおじさんに尋ねる。
「あの〜、ひょっとして…えいりあんに懸賞金かけたのって…。」
「あ〜、おじさんだよ。おじさん。
いや〜。でもホント、来てくれるとは思わなかったよ。
おじさんもさ〜。
酒の席でふざけ半分で発言したことだけに、まさかホントに来てくれるとは…。」
それを聞いて、銀時はおじさんの顔面を鉄板に叩きつける。
「ぎゃあああああああああ!!」
「酒の席でふざけ半分?
おじさーん、こっちは生活かかってるから、真剣なんだよ。
男は冗談いう時も命がけ、自分の言葉に責任もってもらおう。」
「待ってェェ!!おちついてェ!!
大丈夫!金ならちゃんとはらうから、ちゃんと用意してるから。」
すると、神楽は鉄板の上に乗る焼きそばを食べる。
「ウソつくんじゃねーヨ。
こんな、もっさりした焼きそばしか焼けない奴、金もってるわけないネ。
どーせ。お前の人生も、もっさりしてたんだろ。
ほら言ってみろヨ、モッサリって!はい、モッサリ〜!」
「ちょっとォォ。何売り物、勝手に食べてんのォォ!!」
おじさんはフライ返しを構え言う。
「おじさんだって、こう見えても海の男だぞ。
金は確かに無いが、それ相応の品を礼として出すって!」
「ほぅ…。じゃ、見せてもらおーじゃねーか。
えいりあん退治は、その後だ。」
白い砂浜の上に座る三人の男は、【ビーチの侍】と書かれた、センスのないTシャツを着ていた。
「素敵なTシャツですね…銀さん。」
「そーだな。
思春期に母ちゃんがもし着てたら、ドメスティックバイオレンスの引き金になりそーだな。」
横で神楽と一緒に砂の山を作る、愛は笑顔で言う。
『銀時!このTシャツ格好いいっすね!!
なんか、やる気出てきた。』
そんな愛も、ぶかぶかの【ビーチの侍】Tシャツを着ている。
「おっ!お姉ちゃん目が高いね。
そのTシャツはねぇ。
ウチの店員しか着ることが許されない、非売品のレアモノだよ。
これで君達も、海の男と女の仲間入りだ!
だから俺を解放しろ!海の男は、こんなことしないぞォォ!!」
海の上に浮かぶのは、流木に括りつけられた店長。
叫んでいるが、砂浜組は聞いていない。
「なかなか、かからねーな…えいりあん。」
「銀さん、あの…言いづらいんだけど。
全てを、このえいりあん狩りに賭けてたんで…帰りの交通費が。
どうしましょ?」
「やるしかねーだろ。」
マダオに尋ねる。
「やるって、何を?」
「誰もいない海に、一匹の化け物と3匹と一人のビーチの侍。
俺達が護らずに、誰がこの海を護るってんだ。」
マダオは語る。
「お前らは、なにか落ちこんだ時。どうやって気を静める?
人間ってのは、その立ち直り方で、二種類に大別できるんだ。
一つめは、自分より卑小なもんを見て、俺ァまだマシだとなぐさめる奴。
二つめは、自分より大きなもんを見て、チンケな自分ごと、どこかへスッ飛ばしちまう奴。
俺ァ二つめだ、昔から嫌なことがあると、よく海にきた。
己の小ささを知るためにな。
ちなみに、ハツ(妻)と出会ったのも海だ。
わかるか?海は俺の教科書であり、先生であるんだ。」
マダオは立ち上がる。
「人は誰でも心に依りどころというものを、もってるもんさ。
たとえ職を転々としょーが、俺の心はいつもここにある。
そして仕事ってのは、そういった自分の居場所を護る手段だと思ってる。
金云々[うんぬん]じゃねェ、こいつは俺の天職だ。
わかるか?この気持…。」
長々と喋っていたマダオはの目の前には、いつの間にか水着を着た銀時と新八がいた。
「…お嬢ちゃん、愛さん。
わかるか、俺の気持ち。」
「いいな〜みんな泳げて。」
「………そーだね。
ああ、そーか…お嬢ちゃんは日の光に弱いから、海水浴もできねーのか。
でも、愛さんは?」
『神楽が一人だと寂しいと思って、話し相手くらいにはなれるし…。』
「優しいなぁ、愛さんは。
でも、海水浴は止めといた方がいいだろう。
【えいりあん】が出るかもしれんってのに、大丈夫かアイツら?
まっ、いいか。人の話もきかん奴は、死んじまえばいいんだ。」
大きな岩を持った神楽が、口を開く。
「いいな〜、みんな泳げて。」
「お嬢ちゃん?ちょっと何するつもり?
どこで見つけてきたの、それ…ちょっと。」
『流石っす、神楽。』
「流石じゃないよ。感心してる場合じゃないよ。」
「他人の幸せを見る位なら、いっそ壊してしまった方がマシよ。」
「みんなァァ、逃げてェェ。
病気だ!この娘、病気…ん!!」
マダオの目に映ったのは、店長の後ろに近づく鮫の背びれの様なものだった。