空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)

□祭り編
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橋の上で座っていた桂に、笠を被った派手な着物の人物が近づく。



「誰だ?」



桂の問いに男は笑いながら答える。



「…ククク、ヅラぁ。
相変わらず、幕吏から逃げまわってるよーだな。」



「ヅラじゃない、桂だ。

なんで貴様がここにいる?
幕府の追跡を逃れて、京に身をひそめているときいたが。」



男はキセルを吹かしながら言う。



「祭りがあるってきいてよォ。
いてもたってもいられなくなって、来ちまったよ。」


桂は呆れながら言う。



「祭り好きも大概にするがいい。
貴様は俺以上に幕府から嫌われているんだ。

死ぬぞ。」



「よもや、天下の将軍様が参られる祭りに参加しないわけにはいくまい。」



桂は男の言葉に驚く。



「お前、何故それを?
まさか…。」



「クク、てめーの考えてるような、だいそれたことをするつもりはねーよ。
だが、しかし面白ェだろーな。
祭りの最中、将軍の首が飛ぶようなことがあったら。

幕府も世の中もひっくり返るぜ。」



桂はさらりと言い放つ男に寒気すら感じる。



「そう言えば、ヅラ。
てめー、愛に怒鳴られたらしいな。」



「なっ…なんでそれを…。」



「あの男の次は銀時か…。
つくづくバカだなぁ。」



「高杉、貴様なにを考えてる?
愛に手を出したら、例えかつての仲間でも許さんぞ。」



「そーか、あいつァ喋ってねーのか。」



高杉は振り返りながら言い放った。



「愛が京からかぶき町に来た原因は俺だ。
あいつが一番、傷つく方法でな。」








【源外庵】と書かれたボロい小屋。
その中からは終始、機械音が聞こえる。

お登勢は中の人間に向かって叫んだ。



「コラぁぁぁぁぁ!!クソジジイぃぃぃ!!
平賀、テメッ。出て来いコノヤロォォォォォ!!

てめーは、どれだけ近所の皆様に迷惑かけてるかわかってんのかァァ!!」



それに続いて、周りの野次馬も叫ぶ。



「昼夜問わず、ガシャコンガシャコン!
ガシャコン戦士か、てめーはコノヤロー!!」



「ウチの息子なんてなァ、騒音で気ィ散っちゃって、受験おちちゃったぞ。
どーしてくれんだオイ!!」



お登勢はタバコを取出し言った。



「江戸一番の発明家だか、なんだかしらねーが。
ガラクタばっか、つくりやがって。
私ら、【かぶき町町内会一同】も我慢の限界だ。
今日こそ決着つけてやる。

オイ。ヤローども、やっちまいな!!」



やっとスタンバっていた万事屋一向に、お呼びがかかる。
スピーカー二台とラジカセ、マイクを持って四人はシャッターの外に立つ。


周りの奥さん方は何がしたいのか分からない様子だ。



「一番、新宿から来ました。志村新八です。
よろしくお願いします。」



伴奏が終わり、メロディーに入る。
その瞬間、人間が発するっは思えない音痴な歌が聞こえ始める。



「おいィィィィィ!!
ちょーちょーちょーストップストップストップ。
オイ、止めろコラ。てめっ何してんだコラ。

私は騒音止めてくれって言ったんだよ!
なんだコレ。増してるじゃねーか。
二つの騒音がハーモニー奏でてるじゃねーか!」



お登勢の言葉に、銀時はしごく当然のように言う。



「いじめっこ黙らすには、同じよーにいじめんのが一番だ。
殴られたこともない奴は、人の痛みなんてわかりゃしねんだよ。」



「わかってねーのはお前だァ、こっちゃ鼓膜破れそーなんだよ!!」



「何言ってんだ、バーさん。一番痛いのは新八だ。
公衆の面前で音痴、晒してんだから。」



「なんか気持ちよさそーだけど!!」



すると、神楽が新八の隣に来る。



「新八ぃ。次、私に歌わせてヨ。
北島五郎の新曲、手に入れたネ。

ねぇ…ちょっと。
オイ、きーてんのか音痴。」



「んだよ、止めろや〜。」



神楽と新八がマイクを取り合うのを、愛が急いで止めにいく。



『二人とも喧嘩はダメっす!
じゃんけんしなさい。』



「愛は静かにしとくヨロシ。
安心するネ、ちゃんと私とデュエットアル。」



「黙れ!俺だって途中で止められてんだ!!」



しかし、また再燃してしまう。



『銀時〜!HELP!!』



「あ〜あ。何やってんだ、あいつら。
しょーがねーな。

オイぃぃ!!
次歌うのは俺だぞォ!!
愛とデュエットするんだから。」



「おめーら。一体、何しに来てんだァ!!」



お登勢も加わって、五人はマイクを取り合う。



「もういい。
てめーらの歌きくぐらいなら、自分で歌う!貸せ!」


「てめーの歌なんて、ききたくねーんだよ。
腐れババア、黙ってろ!
愛の歌きかせろ!!」



「なんだとォォ!!
じゃあ、愛とデュエットでどうだコノヤロォォ!!」



『いや、私はお風呂で歌ってるからいいっす。
それより、最初の目的は…!?』



その時、今まで固く閉ざされていたシャッターが開いた。


中から現れたのは大きな【カラクリ】だった。



「…え?
え?…これが平賀サン?」


源外と思われるカラクリは、銀時の頭をわしづかみにする。



「いだだだだだ、頭とれる!頭とれるって、平賀サン!」



「止めろォォォ、平賀サン!!」



『ああ〜!銀時がぁ〜!!
平賀さん、ストップ!』



「たわけ。平賀は俺だ。」



急に聞こえた声に向かって顔を向けると、おじさんが出てきていた。



「人んちの前でギャーギャー騒ぎやがって、クソガキども。

少しは近所の迷惑も考えんかァァァァァ!!」



「そりゃテメーだ、クソジジイ!!
てめーの奏でてる騒音のおかげで近所の奴は、みんなガシャコンノイローゼなんだよ!!」



「ガシャコンなんて騒音奏でた覚えはねェ!
“ガシャッウィーンガッシャン”だ。」



お登勢が源外に言い返した事から、言い争いがヒートアップしていく。



「源外、アンタもいい年してんだから。
いい加減、静かに生きなさいよ。

あんなワケのわからんものばっかつくって。
【カラクリ】に老後の面倒でも見てもらうつもりかィ。」



「うっせーよババア!
何度、来よーが俺ァ工場はたたまねェ!!帰れ!

オイ、三郎!!
かまうこたァねェ、力ずくで追い出せ!」



「御意。」



そう答えたカラクリこと、三郎は銀時を振りかざす。

源外に向かって…。



「ん?アレ?オイ、ちょっ…。」



そのまま投げられた銀時は源外に当たり、二人とも地面に叩きつけられた。



『わぁ。おじさん、大丈夫ですか?
銀時もしっかり〜!!』
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