空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)

□第二十四訓 昔の武勇伝は三割増で話せ 盛り上がればいいんだよ 盛り上がれば
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「坂田サーン。
オ登勢サンノ代ワリニ、家賃ノ回収ニ参リマシタ。

開ケテクダサーイ。イルノハワカッテマスヨ。
坂田サーン。アホノ坂田サーン。」



万事屋の前で、キャサリンが呼びかけてくる。

だが、万事屋には金がない。


銀時の提案で机の下で四人は隠れる。



「いいか絶対動くなよ。

気配を殺せ、自然と一体になるんだ。
お前は宇宙の一部であり、宇宙はお前の一部だ…。」



『ダメっす…。
あまりにもスケールが大き過ぎる…。』



愛は顔を歪ませる。
それに対し、神楽は笑顔で言う。



「宇宙は私の一部?
スゴイや!小さな悩みなんてフッ飛んじゃうヨ。」



「うるせーよ。静かにしろや!」



「アンタが一番うるさいよ!」



「いや、お前のツッコミが一番うるさい!」



『皆うるさいよ!バレたらどーするの!!』



挙句に、愛も言う。

すると、外が静かになった。



「静かになったな 帰ったか?」



「ナンカ修学旅行ミタイデ、ドキドキスルネ。」



声は背後から聞こえた。
振り向くと、キャサリンが一緒に机の下にいた。



『「「「……………ぎゃああああああ!!」」」』



万事屋に叫びがこだました。









所変わって【スナックお登勢】。

銀時と新八はデッキブラシで床を擦り、神楽は雑巾掛け、愛は棚や机を拭いていた。



「キャサリンは鍵開けが十八番[おはこ]なんだ。
たとえ金庫にたてこもろーが、もう逃げられないよ。」



「フン。金庫が開けられよーが、中身が空じゃ仕方ねーだろ。

ウチには、もうチクワと小銭と愛のチョコしかねーぞ。さァどーする。」



『私のチョコは誰にも渡さないっす…。
私の希望はあれだけ。』



「どーするって、お前らがこれからの生活どーするんだァ!!

とにかく、金が無いなら働いて返してもらうよ。」



すると、神楽が机にぶつかり凄い音がする。



「チャイナ娘ェェ!!
雑巾がけはいいから、お前はおとなしくしてろォ!!
バーさんのお願い!」



今度はキャサリンがタバコを吹かしながら言う。



「ソレガ終ワッタラ、私ノタバコ買ッテキナ。」



「てめーも働けっつーの!」



お登勢はトイレスリッパで叩く。

キャサリンは神楽の所に行き、言い合っている。



「しかしバーさん。
アンタも、物好きだねェ

店の金かっぱらったコソ泥を、もう一度雇うだァ。
更生でもさせるつもりか?」



『お登勢さんは優しいから…。
でも、裏切らないとは限らないし…私は心配っすよ。』


「そんなんじゃないよ。
人手が足りなかっただけさーね…。
愛、ありがとね。」



『でも…。』



「盗み癖は天然パーマなみにとり難いって話だ。

ボーッとしてたら、また足元すくわれるぜ。バーさん。」



「………大丈夫さ。」



お登勢が真剣な表情で話す中、銀時は愛を連れ外へ出る。



『銀時、何でお登勢さんはキャサリンを信用してるんだろ…。』



「さぁーな。」



愛の表情は心配だけではない。
それに気付いた銀時の表情は苛立ちが見える。



「せっかく逃げてきたんだ。
このことは一回忘れて、パフェでも食べに行こうぜ。」



『うん…。』



愛の顔を見て、銀時は思う。



「(ババアに嫉妬って、どんだけなんだよ。
俺も末期かねェ。)」



二人の足は行きつけの喫茶店に向かう。

パフェを食べても、愛の表情は晴れなかった。








「銀時、この子…。」



「だから、ババアの着物貸してくれって言ってんの。」



愛が銀時の元に来た時、銀時の次に出会ったかぶき町の人間がお登勢だった。

京からの長い道のりで、着物はおろか、草履も擦り切れている愛を見かねた銀時が、着物を借りるために連れてきたのがきっかけだ。



『………誰。』



愛は銀時達と別れてから、極度の人見知りになっていた。
昔との違いに銀時さえも驚いた。

それは、初めて会ったお登勢に容赦なく睨みつけるような勢いだった。



「愛、別にコイツは悪い奴じゃねーよ。
俺に家貸してくれてんだ。」



銀時が言うも、一向に殺気を消そうとしない。

銀時が諦めて有り金全部を使い、愛の着物を買おうと決めた時。



「銀時、ちょっとこの子借りるよ。」



お登勢はそう言って、愛を連れ出した。



「アンタに何があったのかは知らないし、聞こうとも思わない。

でも、銀時の所に来たのも話せないのも訳があるんだろ?


全部忘れろとは言わないけど 今から買い物終わるまで全部忘れな。」



そのままお登勢は愛のために服や靴、鞄から化粧品まで何もかも買った。



「私には子供がいないからねェ。
なんだか娘が出来たみたいで嬉しいよ。」



親のいない愛には、お登勢が親のように感じて…。



「アンタ、何か好きなモンあるかい。」



『チョコ…。』



「じゃあ、そこの喫茶店に入るか…。
チョコパフェでいいかい?」



人の親切に触れるのが久しかった愛は涙を流す。



『なんで…そんなに良くしてくれるの……。』



「なんでって、なんでだろうねェ?
でも、私はしみったれた顔した奴をほっとけるような人間じゃない。」



『ありがと……ございます…。』



そして、愛はお登勢に歌舞伎町に来るまでの事を、全て話すのだった。
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