空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)

□第十九訓 アイドルだって ほぼお前らと同じことやってんだよ
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場所は【ブジテレビ】の待合所。
銀時と愛、新八の三人はソファーに座っている。



『新八、ホントに大丈夫っすか?』



「全然平気です。
ありがとうございます、愛さん。」



ずっと、悲しい顔をしながら、腕を組む新八に銀時が話しかける。



「バカな奴だなァ。
首つっこめば嫌な思いするのは目に見えてたろ。
おとなしく家でカレンダーめくってりゃ、よかったのによ〜。」



「お通ちゃんは僕が護るって言ってるでしょ。」



「いいカッコしよーたって無駄だぜ。

恋する娘は猪と同じよ。
前しか見ちゃいねーぜ。」



「そんなんじゃないですってば。」



新八はテレビに映るお通を見る。



「お通ちゃんは僕の恩人なんですよ。

あれは、銀さんと愛さんに会う前。
僕がまだフリーターをやってて、何やってもダメで、いつも店長に怒られてた頃。

何もかも嫌になって、全部投げ出そうとしたことがあったんです。
そんな時にきこえてきたんです…。」



新八の瞳は、ここにいないお通を思う優しい瞳だった。



「正直、何歌ってるのか。
よくわからなかったけど。

お客さんも誰もいないのに精一杯歌ってる姿見てたら、なんか涙が出てきて…。


お通ちゃんはきっと覚えてなんかいないだろーけど、僕はあの時、一杯元気もらったんですよ。

何でもいいんです。
出来ることがあるなら、あの時の恩返しがしたいんです。」



新八の瞳は、お通をへの気持ちで真っ直ぐだった。

そして、真っ直ぐに言う。



「こんなことしか僕にはできないけど、何かしてあげたいんです。」



銀時は頬をボリボリ掻き、愛は見ていられなくなり、視線を下にする。



「……そーかィ。
オメーがそういうなら、もう何も言うめー。」



銀時がそう言ったと同時に足音が聞こえ、神楽が駆けてくる。



「銀ちゃん 愛!!
大変アル!!

ピン子がいたヨ!!
ピン子が【渡る世間は鬼しかいねェチクショー】の収録に来てるアル!!」



『「なにィ!!」』



神楽の言葉に銀時と愛は「サインくれェ!」と叫びながらついていく。



廊下を走っていると、収録を終えたお通を見つけた。


『ごめん。銀時、新八をよろしく。』



そう耳打ちして、お通の所に行く。



「お疲れ様でしたー。」



挨拶をするお通に愛は話しかける。



『お通、ちょっといい?』



「っ!あなたは万事屋の…。」








二人はテレビ局の前の階段に座る。



『貴女の仕事って…何っすか?』



突然の質問に、お通は驚く。



「え!?
そんなのアイドルに決まって…。」



『私が聞いてるのは、んな事じゃねーんすよ。』



いつもより低音の声に、お通は冷や汗が出る。



『あんたはアイドルだよ!
でもな、アイドルってのは人に感動や勇気や憧れや…。
そんな気持ちを与えるのが仕事じゃないんすか?

あんたは自分のことばっかりで、自分を思ってくれている大切なファンを考えていない。』



「そんなこと言われても!
私だって女だよ!
人並みに友達作って、遊んで、笑って…時には恋だってしたいよ!!」



『でも、その身勝手な思いで傷ついた人がいんのよ!
もっと周り見て言え!!』


「何がよ!貴女こそ!
意味わかんないっ!」



どんどん苛烈になっていく言い合い。
普段の二人からは想像出来ないくらいだ。



『んなら一発殴って、その“曲〜が〜りくねった道”並の根性。
叩き直してやらぁー!!』



愛の拳が、お通に届く寸前に止められた。



『……新八。』



「ありがとうございます

でも、大丈夫ですから」



新八の顔を見て、愛は後ろに下がる。


そこには銀時がいて、やり過ぎだろ…と呆れていた。



『アイツ、どうだった?』



「お前の情報通りだった…。」



『…………。』



愛は数時間前の事を思い出す。

お通と別れてからのGOEMONを、愛が尾行していたのだ。

すると、お通以外にも女がいたり、遊びで付き合っていた発言を男友達に連発するなど。

愛の逆鱗に触れる数々の事を、あの男はやっていた。



『八つ当たりだとしても…。新八の顔を見てたら、耐えれなくなって…。

私って最低っす。
自分が自分で許せない…。』



「はぁ お前は…。
あのなァ、お前の言うことは確かに正論であり矛盾だ。
しかも 八つ当たり。

でも あの娘にも伝わったんじゃねーか?
あとは新八に任せて、帰ェーるぞ。」



『……うん。』








「………そっか、わかった。」


全てを知ったお通の顔は沈んでいる。



「…お通ちゃん、あの…。」



「あ、いーよいーよ大丈夫。
私、慣れてるから、こーゆーの。

男運悪いの…。
前に好きだった人もホモだったし。」



「ホモだったの?」



お通は笑いながら言う。



「バカみたいね。
男にはフラれるし、アイドルとしての人気も下がっちゃったし。


ホントはね…愛さんの言うことも分かってたんだ。
それでも意地張っちゃって、素直に受け容れられなくて…。
ホントに悪いことしたなって…。

私、なにもなくなっちゃった…。」



新八は申し訳なさそうな顔で言う。



「お通ちゃん、僕……。」



「隊長ォォォ!!」



言葉を遮ったのは親衛隊の人達だった。



「加勢にきましたぜっ!!」


「一人だけカッコつけるなんてズルイっすよ!!」



「僕ら徹夜で張りこみますよ。」



これにはお通も驚く。



「みんな。」



「悪いけど僕たちみんな、しつこい奴ばかりでね。

ちょっとやそっとのスキャンダルじゃ、君のファンはやめないよ!」



お通は涙目で言う。



「愛さんに、ごめんなさいって伝えて。」



「もちろんだよ。」



「……ありがとう、新二君。」



「いや、新八なんですけど…。」



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