空色スパイラル (銀魂逆ハー銀時オチ)

□第一訓 天然パーマに悪い奴はいない
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「侍の刀はなァ。
鞘におさめるもんじゃねェ、自分〔てめー〕の魂におさめるもんだ。」


刀を翳しながら男は語った。
しかし、男は床に伏せていた。
その横で小さな少年と少女が座っている。


「時代はもう侍なんざ必要としてねェがよ。
どんなに時代が変わろうと、人には忘れちゃならねーもんがあらぁ。」


男は少年に刀を渡す。
少年もしっかりと刀を握った。


「たとえ剣を捨てる時が来ても、魂におさめた真っすぐな剣だけはなくすなっ
ゲホッ」


「「父上!!」」


「…ああ。
雲一つない江戸の空…、もう一度拝みたかったなァ…」


男の見上げた青空には、街並みに似合わない船が飛んでいた。






「侍の国」


僕らの国がそう呼ばれていたのは今は昔の話。

かつて侍達が仰ぎ夢を馳せた江戸の空には、今は異郷の船が飛び交う。

かつて侍達が肩で風を切り歩いた街には、今は異人がふんぞり返り歩く。


少年、志村 新八はバイト先の店でレジ打ちをしていた。


「だからバカ。おめっ…違っ…。
それじゃねーよ!!そこだよ そこ!!」


そして店長にどなられている。


「おめっ、今時レジ打ちなんてチンパンジーでも出来るよ!!
オメー人間じゃん!
一年も勤めてんじゃん!
何で出来てねーんだよ!!」


「す…すみません。
剣術しかやってこなかったものですから。」


「てめェェェ。まだ剣ひきずってんのかァ!!」


店長に殴られ、その場に倒れる。


「侍も剣もとっくに滅んだんだよ!!
それをいつまで侍気どりですかテメーは!!あん?」

新八は、悔しさに顔を歪める。

そして、下を向いているとハンカチが差し出された。


『君、大丈夫?』


そこにはきれいな女の子が立っていた。


「お客さん、すみません。
こら!お前も謝るんだよ!!
こんなクズにそんな綺麗なハンカチを…。」


『クズじゃないっすよ。
それにハンカチは拭くためにあるんだから、ハンカチだって嬉しいに決まってる。』


女の子は『頑張ってね』と言って去ってしまった。

また店長が怒鳴ろうとした時。


「オイオイ、そのへんにしておけ店長。」


店長が?を浮かべると、パッと見豹の3人組が話しかけてきたのだった。


「オイ少年。レジはいいから牛乳頼む。」


「あ…ヘイただいま。」


新八が牛乳を取りに行くと、店長と豹の天人達の会話が聞こえる。

新八は早足で牛乳を持って行く。
すると、豹の天人に足を引っ掛けられて、転んでしまった。
笑い声が聞こえる。



二十年前、突如江戸に舞い降りた異人【天人】。
彼等の台頭により侍は弱体化の一途をたどる。

剣も地位ももぎとられ、誇りも何も侍は捨て去った。

いや…侍だけじゃない。
この国に住まう者の中に、さっきの女の子のような魂を持つ者は、殆どいないだろう。


「(きっと みんな もう…。)」


新八が、そう思った時。


「おい。」


次の瞬間、店長がぶっ飛ばされた。


「なっ なんだァ!?」


「何事だァ!!」


天人も騒ぎだす。
そんな中、新八の目に男の腰に刺さった木刀が見えた。


「(侍!?)」



「なんだ貴様ァ!!
廃刀令のご時世に木刀なんぞぶらさげおって!!」


「ギャーギャーギャーギャー。
やかましいんだよ発情期ですかコノヤロー。」


男は、すっとパフェのカップを見せると。


「見ろコレ…。
てめーらが騒ぐもんだから俺らのチョコレートパフェが、お前。コレ…。

まるまる、こぼれちゃったじゃねーか!!」


天人に木刀を振り下ろした。


「…きっ…貴様ァ。何をするかァァ!!」


「我々を誰だと思って…」


天人達の言葉に聞く耳など持たず。


「俺ァなァ!!
医者に血糖値高過ぎって言われて…。

パフェなんて週一しか食えねーんだぞ!!」


残りの二人も片付けた。


パチパチパチと、新八の耳に拍手が聞こえる

振り向くと、あの女の子がいた。


『また派手にやったっすね。まあ、人様のチョコパフェこぼしたんだ、当然の報いだよ。

それにしても、少年すっごく不憫っすね。』


と笑った。

新八はその時、初めて気付いた。女の子の腰にも木刀が刺さっていたことに。

そして、こうも思った。


「(そいつらは侍というにはあまりに荒々しく、美しく。

しかし、チンピラやただの女の子というには、あまりにも…)」


「店長に言っとけ。味はよかったぜ。

愛、いくぞ。」


『は〜い!じゃあね、少年。』


真っすぐな目をした男女だった。

のれんをくぐり、二人を見送ると。


「ハイハイ、ちょっとどけてェ!!」


二人の同心がやってきた。

「あっ!!いたいた!!
お前か 木刀振り回して暴れてる侍は!!」


「おーし動くなよ」


「ちよっ…待って
違いますって!!」


「オイ弥七!!中調べろ!!」


いきなりの事に茫然としていると、中に入っていった方が言う。


「あーあ茶斗蘭星の大使でさァ
こりゃ国際問題になるぜ…エライ事してくれたな」


「だから僕は違いますって!!
犯人はとっくににげたの!!」


新八は必死に弁解するが。

「ハイハイ。犯人はみんなそう言うの、言い訳は凶器隠していいなさいよ。

よし、じゃあ調書とるから署まで来て。」


「…アレ?」


新八は驚いた、なぜなら自分の腰に血まみれの木刀が刺さっていたのだから。


「あれェェェェ!?」
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