短編
□楽観視してくれるなよ
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前世で言われた言葉。
〈土方さんは良いですよね。〉
何が良いんだ。
こんな気持ちになるのに……。
〈近藤さんも明理珠も、あんたにばっかり!!〉
じゃあ、何でアイツは俺の横にいないんだ。
〈明理珠を傷つけたら、僕は絶対にアンタを許さない。〉
分かってる。
だから、俺は……。
《……トシ。
大好きだから……。
私……死んでも…生まれ変わっても……。
だから……。》
馬鹿野郎。
お前は、いつも嘘ばっかりじゃねえか。
体調が悪くても、倒れるまで黙ってるし。
泣きそうな時でも、大丈夫の一点張り。
死ぬ時だって……。
『【さては、扇のにはあらで、海月のなな……。』
「なんなり。」
『っ、すみません。
海月のなんなり。】と聞こゆれば、【これ隆家が言[げん]にして……。』
「言[こと]にしてむ。」
『ふぇっ……えっと……。
言[こと]にしてむ。】とて……。
きゃっ!』
明理珠の隣にいる総司が、明理珠を庇うように肩を寄せる。
それだけで、ムカついて仕方がねえ。
『総司くん?』
「明理珠は黙ってて。
……土方先生。
何で、明理珠にばっかりキツいんですか?」
「何言ってやがる。
他の奴と、何ら変わらねえよ。」
「そうは見えませんけどね。」
総司の行動や口調、一つ一つが気に食わねえ。
ずっと、聞き続けてたはずなのに。
「明理珠のことになると、すぐムキになるの止めて下さいよ。
明理珠が恐がるんで。」
『総司くんっ!』
「いっつも言ってるじゃない。
土方先生が恐いって。」
『それは……その……。』
分かってる。
もう、俺のモンじゃないことも。
もう、アイツの髪も瞳も口も、笑顔も……。
全て、触れることが出来ないのも……。
「明理珠、行こう。」
『えっ!?
行こうって、授業中……。』
「別に大丈夫だよ。
だって、土方先生が悪いんだから。」
二度と、お前のことは愛せないから。
せめて……。
『ちょっ……総司くんっ!
あっ、その。
土方先生っ、ごめんなさい!』
お前の心に、どんな形であれ残りたい。
ただの教師で終わるくらいなら……。
「じゃあ、また。
土方さん。」
〈アンタに明理珠を守れなかったら、来世では僕が明理珠を守りますよ。〉
《そんなの、あり得ないって!
トシは、ちゃんと守ってくれるし。
むしろ、私が守ってみせるし!!
ねっ、トシ!》
あの時みたいに、アイツを守れる自信があれば……。
離れていくこの手を、掴むことが出来たのに……。
楽観視してくれるなよ
(俺は約束通り、いつまで待ち続けたらいいんだ……。)
お題サイト DOGOD69様より