短編

□享楽に耽る、そんな毎日。
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暗い部屋。
何もない空間に、一つだけ異様な天蓋付きのベッド。

そこに、一人の女が眠っている。


「明理珠。」


部屋の扉が開き、男がベッドの縁まで歩いてくる。


「ただいま。」


男は女に微笑む。


『…………とき。』


女は虚ろな瞳を開く。


「ん、どうした?」


『……銀とき…。』


女は男の服を掴む。


「大丈夫、お前には俺がいるぜ。」


『……銀時っ!』


男は女を抱き締める。


『恐いの。
知らない人が夢の中に出てきたり、大事なことを忘れてる気がするの。』


「…………。」


『銀時?』


「大丈夫だ、俺が守るから。
あいつのことなんか、忘れさせてやるよ。」


『あいつ……?』


男は笑みを浮かべると、女の手を取る。


「俺が握っててやるから、安心して寝てな。」


『ありがと。』


女は再び横になり、しばらくすると寝息をたてる。


「明理珠…。」


男は女が寝たことを確認すると、今までのが嘘のように黒い笑みを浮かべる。


「やっぱり、薬の効き目が悪かったのか…。
それとも……。」


男はポケットに入っていた、真っ赤なシルバーリングを自分の指にはめる。


「まあ。
どうせ、思い出そうが何だろうが、もう俺以外は誰もいねえんだ。

好きな女が俺だけを頼ってくれるなんて、男として嬉しくないわけねえよな。」


再び繋がれた手には、輝くリングと赤いリングがはまっていた。


「これで、お前は俺のもんだ。」


このリングがペアと呼べるのか否かは、この二人にしか分からない。


享楽に耽る、そんな毎日


今日も夢の中にいるのは、あなたと似ているようで似てない人


お題サイト DOGOD69様より
 

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