短編

□文化祭〜薄桜学園編〜
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幕が上がり、ナレーションの山崎の声が聞こえる。


《昔々、あるところにアリスという少女がいました。
本が大好きなアリスは、今日も木陰で本を読んでいました。》


舞台の照明が点くと、木の下でアリスこと、土方が座っている。


「やっぱり、本はいいな。
………それにしても、姉貴はどこに行きやがったんだ?」

《アリスは帰りの遅い姉を心配しながらも、再び本の世界に夢中です。

すると、そこに白いウサギが走ってきました。》


舞台上には、白ウサギの一が走ってくる。


「このままでは遅れてしまう。
例え、風間のためであろうと、これは任務。
この劇を終えるまでは、何とかやり遂げなければならぬ。
故に、急いで城に戻らねば…。」


「なんだ?あのウサギ。」


《時計を見ながら慌てる白ウサギ。
アリスは気になり、ウサギの後を追いかけました。》


「この穴に入ったんだよなぁ?
よし……。」


土方は一度深呼吸すると、穴の中に入り込む。


「くっ…!!」


《アリスは、そのまま穴の中に落ちていってしまいました。》


「ったた…。
ここは、どこなんだ?」


「ここは不思議の国ですよ。」


土方が見上げると、そこにはチェシャ猫の総司がいた。


「僕はチェシャ猫。
君は誰?可愛らしいとは言い難い、眉間にシワ寄せたお嬢さん。」


「むかつく猫だな。
生意気言いやがって。」


土方は軽く溜息を吐き、総司に訊ねる。


「なぁ、あんたは白いウサギを知らねぇか?」


「ウサギ?
教えてほしいの?」


「ああ。」


「本当は、こんなフリフリのスカート着て、いかつい顔してるような人に教えたくなんかないんだけど。

近藤さんと椿の頼みだからね。
今回だけ、特別に教えてあげるよ。」


「ああ、恩に着る。」


総司は遠くを指差す。


「向こうにあるハートの女王のお城だよ。
ホント、あの女王って胸クソ悪いよね。

そうだ、アリス。
君が退治して来てよ。」


「なんで、俺が…!」


「いいじゃない、減るもんでもないし。
そのついでに、文化祭が終わったら、ご飯おごって下さいね。」


「てめぇ、打ち上げは禁…。」


「それじゃあ、頑張って下さいね!」


「てめぇ!こら、待ちやがれ!!」


《いつの間にか、チェシャ猫はいなくなってしまいました。》


「何だったんだ、あの猫。」

《アリスは仕方なく、猫が指差した方へ歩き始めました。》
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