短編

□文化祭〜銀魂高校・3Z編〜
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《ある日のこと、お城の王子様が花嫁選びの舞踏会を開くことになった。
その知らせは、シンデレラの家にも届いた。》


姉二人は招待状を見ている。


「これは…もしかすると、王子様に見初めてもらえるかもしれませんぜィ。」


「てめぇなんかに、あの王子が振り向くと思うか?
高嶺の花だぜ。」


「そのほうが、燃えますぜィ。
まあ。土方さんが諦めてくれるなら、俺としてはライバルが減って嬉しいんで……。」


「だれも、諦めるとは言ってねぇ!」


《母君と姉君たちは、大はしゃぎ。
シンデレラは、そんな姉君たちを、ニッコリ笑って送り出しました。》


「ったく、テンションだだ上がりじゃねぇか。
なんか、むかつくな。

……王子様か。
俺も舞踏会に行ってみてぇな。」


すると、どこからともなく声が聞こえる。


「泣くのはおよしなさい、シンデレラ。
男の子でしょ?」


「おい、シンデレラは女…。」


「そんなこと、どうでもいいわ。」


魔法使い、お妙は窓から家に入りこむ。


「不法侵入だぞ。
てか、泣いてねぇし。」


「シンデレラ。
あなたはいつも辛い仕事を頑張る、とてもいい子ね。
そのご褒美に、このわたしが舞踏会へ行かせてあげましょう。」


「本当か!?」


「ええ。
じゃあ、そこのカボチャを取って。」


「これか?」


《魔法使いが呪文を唱えると、カボチャはどんどん大きくなり、黄金の馬車になった。》


「おぉ、すげぇな。」


「まだまだ、これからよ。
馬車を引くには、人手が必要ね。」


ネズミを白馬に、トカゲをお供に変える。


「ほら、馬車に白馬にお供。
シンデレラ、これで舞踏会に行けるわ。」


「サンキュな。
けど、格好が格好だから…。」


「あら、すっかり忘れてた。」


《魔法使いが最後に一振り杖を回すと、シンデレラの服は純白のドレスに変わった。
そして、魔法使いはガラスの靴をプレゼントしてくれたのだ。》


「さあ、楽しんでらっしゃい。
ただし、わたしの魔法は12時までしか続かないから、それまでに帰ってくるのよ。」


「それでは、行きましょう。シンデレラ様。」


お供のたまがシンデレラを馬車に乗せ、去っていった。


《シンデレラがお城に向かっている頃、お城では舞踏会が始まっていた。》


中央に座る王様、高杉は不機嫌そうに言う。


「てめぇら、今日は俺の息子の花嫁選びのための舞踏会に、よく来てくれたなァ。
だが、ぜってーに息子は渡さねェ。
明理珠は俺ももんだ。」


『父上…。』


王様の言葉に、王子明理珠も苦笑する。

そんな中、シンデレラが舞踏会に駆け込んできた。


「まぁ、凄く美人じゃない!
流石、私の先生。」


「なに言ってるんすか、だぜん先輩のほうが!」


「拙者は明理珠殿の方が好みでござるが、こんなことを言うと、晋助に何をされ…。」


「おい、万斎。
聞こえてるぜィ。」


姉達も、シンデレラの存在に気づく。


「近藤さん。
あの娘は何なんだ?
みんな、あいつを見てるぜ。」


「悔しいけど、凄く綺麗でさぁ。」


「私も知らないわ。
この国に、あんな美しい娘がいたなんて……。」


《シンデレラのあまりの美しさに人々が騒いでると、それに気づいた王子様が、シンデレラの前に進み出た。》


『美しい姫。
どうか、僕と踊っていただけないっすか?』


「喜んで。」


《シンデレラは、まるで本当のお姫様のようにダンスが上手だった。
王子様は、一時もシンデレラの手を離さない。
二人は夢のような時間を過ごしたのだ。

しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付くともう12時5分前だった。》


「あっ!」


『どうしたの?』


「悪ぃ、王子様。
俺、行かなくちゃ!」


『まっ、待って!!』


《急いで帰らなければ、魔法がとけてしまう。
シンデレラは、あわてて階段を駆け下りた。》


「っ、靴が!」


『姫!せめて、せめて名前だけでも…!!』


王子は落ちていた靴を拾う。


「これは、あの姫の…。」


王子は靴を拾い上げ、大事に抱えこんだ。
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