短編

□TEST・WAGER
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二学期中間考査。
学生にとって、不快以外の何物でもないテスト。

その一週間前に、事件は起こった。



『骸!!』



明理珠は黒曜中の3年6組28番。
そして、三週間前から転校生の六道骸の彼女になった。



「明理珠、どうかしましたか?」



『今日の帰りなんだけどさ、歌帆と帰ってもいい?』



歌帆は明理珠の幼なじみで仲がいい。
歌帆なら安心だろうと、骸は了承した。

この帰りに、あんな事件が起こるなんて知らずに。








『歌帆!お待たせ。』



「いや、1分前に来たとこ。」



歌帆はクラスでは大人しい子で有名だが、明理珠を含む少数には毒舌としても有名である。

そんな中でも、特に本性を知っているのは、明理珠ぐらいだ。



『骸に断ってきたから…。』



「ラブラブだね。」



『そっ…そんなこと無いよ!!』



明理珠と骸の仲はクラスでも公認である。
もともと明るい性格の明理珠は人気があった。
なので骸と付き合うのに、皆協力的だった。

まあ、協力が無くても結果的には両思いが発覚したのだが…。



『でも、骸はホントに優しいんだよ。
今度のテストも数学苦手って言ったら、教えてくれるって!!』



「良かったね。

んで、体は大丈夫なの?」



『大丈夫、大丈夫!
多分、精神的な物が大きかったんだと思う。
最初は骸ファンの皆さんに、トイレに連行されたりしたし…。』



そう、付き合い初めて一週間で明理珠は倒れたのだ。



『でも、骸が止めてもらえる様に言ってくれたみたいで、あれっきりなんだ。』



「ふーん。好きだね、六道のこと。

この間なんか、一人で歩きながらニヤついてたよ。
そのうち嫌われるかも…。」



『えっ、嘘!気づかなかった。
いつかな?デートの前の日かな?』



「ちょっ…明理珠。」



『あーっ!どーしよ!!』



「声デカイって。」



そう、ここまでは普通の帰り道だった。



「でもさ。六道って、そんな良い奴じゃないよね。」



『え?』



「ほら、ぱっと見は優等生だけど、不良だし。
性格も良いってわけじゃないでしょ。」



『歌帆、何言ってんの?
骸は凄く優しいよ。
格好いいし、頭いいし、運動神経いいし、周りをよく見てるし。
ってか、歌帆に骸の何が分かるの!』



「明理珠だって分かってないでしょ。
もしかしたら、体目当てとか…。」



『勝手な事、言わないでよ!
骸は違うよ!そんな最低な人じゃない!!

それに骸の為なら、私は体が目的でもかまわな…。』



「そんなんだから、私がいっつも忠告するハメになるでしょ。」



『だから言ってるじゃん。
何言われたって、私は私の考えた通りにするし、性格まで歌帆の言う通りにする必要は無いでしょ!』



「言える立場?
部屋は汚いし、頭悪いし、一人じゃ何も出来ないくせに!!」



明理珠は急に静かになり言う。



『わかった。
じゃあ、賭けしよ。

中間の合計点数が高かった方が勝ち!
私が勝ったら、購買の【ハチミツメロンパン】。』



「受けて立つよ。
じゃあ、どうしよう…。」



『早くしなさいよ。
早くしないと、私は負けても何もあげないよ。』



「ああ、そのほうが良いかも!
だって、私が明理珠に負けるわけないもん。」



明理珠の頭に血が上る。



『っ!わかったよっ。
じゃあ、また明日!』



大きな足音をたてながら、明理珠は家に入っていく。



「わかりやすいなぁ。
ねえ、六道。」



すると、曲がり角から骸が現れる。



「分かってて言ってたんですか?
趣味悪いですね。」



「だって、ホントの事でしょ。
性格悪いもんね。」



「体目当ては違いますよ。」



骸は明理珠の入っていったドアを見つめ言った。



「それにしても、明理珠は可愛いですね。
僕の事、あんな風に言ってくれるなんて。」



「明理珠に休んでた三日間の事、事細かに教えてあげたいわ。
それで、お前が心の底から嫌われればいいのに。」



「明理珠が自分を責めそうなので、止めてください。」



歌帆は骸を睨みながら言う。



「昔は素直な子だったのに。
私が付き合ったって噂が立った時なんか、相手の所に行って、〈歌帆に手を出すな〉って…。
もう、ホントに可愛かった。」



「それ、いつの話ですか?」



「小3。」
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