短編

□アザレアを敷き詰めて眠る
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「じゅ…10代目……、ご無事で。」



「獄寺、心配ねーって。
ツナなら大丈夫だろ。」



朝食を食べに向かったら、獄寺と山本がいた。



『はよー。朝から騒々しいねぇ。』



「明理珠はよく呑気でいられるな。
それでも10代目の幼なじみかよ。」



『何が?ツナになんかあったの?』



「お前!?
もしかして聞いてねーのか?」



獄寺と山本は何とも言えない表情になる。



『!……ツナに何かあったのね。
言いなさい。』



「でもよ…。」



『命令よ、言いなさい。』



「ミルフィオーレだ。」



そう言ったのはリボーンだった。



『リボーンっ!ミルフィオーレって、あの!?』



「ああ。
ただの交渉って話だが、実際は何が怒るかわからねぇ。
だから、お前にはミルフィオーレに行く事を言わないでおいてくれと言われてたんだ。」



『ツナが…。』



頭が真っ白になった。
それと同時に昨日の夢がフラッシュバックする。


ツナを撃った男は真っ白だった。



『ダメ…ダメだよ。
ツナが死んじゃう。
獄寺、お願い。車出して。
ツナを…ツナを追いかけて。』



「明理珠…。」



『早くして、命令よ!!お願いだから!!』



そこからの事は、はっきり言って覚えていない。
ただ、嫌な予感と小さな希望がグルグル頭を回っていた。



「明理珠、着いたぜ。」



『ここがミルフィオーレ……。』



真っ白な、それこそ夢を彷彿させるビルだった。



『獄寺、帰って。』



「帰れって…。」



『多分、私は帰ってこれないから。』



そのまま、黒い私は白いビルの中に溶け込んでいった。



『ツナ!!』



「明理珠っ!?」



最上階の一室に飛び込んだ私の目に移ったのは、真っ白な男が黒光りした銃を、愛しい君に向けていた。



『ツナ!やめて!!』



鈍い音と共に硝煙が漂う。



『…ツナ?』



倒れた君は息をしていなくて、目の前の男は吐き気がするような満面の笑みを浮かべていて。



「君が10代目の門外顧問の明理珠チャン?
やっぱり綱吉クンを餌にしたら来てくれたや。」



『……許さない。』



人間は頭に血が上るとダメらしい。
全然、攻撃が届かないや。
いや、それ以前に実力不足だったのかも…。


まあ、いっか。
ツナのいない世界にいるより、いっそ死んでしまったほうが…。



「あれ?もう終わり?」



『さっさと殺せばいいじゃない。
どうせ死んだって生きてたって同じよ。
私の恋は一生叶わない。』



ツナ、ごめんなさい。

大好きでした。



「なら、僕たちのミルフィオーレに…。」



「明理珠!!」



『獄寺、なんで?』



真っ白な男の手が私に触れる前に、私の心が真っ白になる前に、獄寺が部屋に飛び込んできた。



「明理珠、大丈夫か!?」



『私は大丈夫……。でも…でも、ツナが。』



「テメーっ!!
……しゃーねぇー、一旦引くぞ。」



さっきの明理珠の様子を見たからか、10年間の成長なのか、獄寺はツナと明理珠を連れて逃げることを選んだ。



『そんな!私はアイツを。』



「テメーが死んだら、10代目が悲しむんだよ。」



初めて涙が流れた。



「お前が生きてねーと、10代目が喜ばねーんだよ。
10代目はな、ホントはお前のこ…。」



『大丈夫、ごめん。
私、どうかしてた。』



帰った私を皆は心配してくれたが、そんな事より私はツナの事で一杯だった。






棺に眠る君を見る。



『大好きだよ。
なんでだろ?今なら言えるのに。
ツナへの気持ち、全部言えるのに。』



きっと、この棺の中で君と寝ても、あの懐かしい暖かみは無いから。

私はまだ、ここでは眠れない。
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