短編

□アザレアを敷き詰めて眠る
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目の前で君が撃たれる夢を見た。







目を覚ませば、体は汗でベトベトで。
でも、頭はそんなことを考える余裕もなくて。



『ツナ!!』



「……明理珠?」



急いで君の部屋に飛び込んだら、君はベッドの中にいた。

私は君が寝起きな事も気にせず抱きついた。



『……ツナっ、……よかっ…たっ…ヒクッ……生きてて…。』



昔から、私の夢は良く当たる。

骸が並盛を襲った時も、リングを巡った戦いの時も。
いつも嫌な夢ばかり。



「どうしたの?嫌な夢でも見た?」



『…ツナがいなくなっちゃう夢。』



殺されたとは言えなかった。
いや、言いたくなかった。



「それで、心配して来てくれたんだ。
ありがとう。」



『…ツナは私を置いてきぼりにしないでよね。
今まで二十年ぐらい一緒なんだから。
私、ツナがいなきゃダメなんだからさ。』



「うん……。」



その声が、いつもの信じれる声じゃない気がした。



「大丈夫だからさ、オレは。」



『ホント?』



「ホント。
なんなら一緒に寝る?
十五年ぶりぐらいに。」



『……うん。』



ツナとは幼なじみだった。

隣の家、父親どうしが同じ職場……上司と部下の関係。
昔から仲が良かった。
でも、年齢が上がるにつれて間を置くようになってしまった。
それでも、他の獄寺や山本達よりは信頼関係が深いと思う。……いや、思いたい。

中学の頃、自分がツナに友情以上の感情がある事に気がついた。
でも、それは遅かった。

毎日聞かされたのは、親友の名前。
その頃から、ツナに冷たくあたるようになってしまった。

それは現在、ボンゴレのボスとツナの門外顧問になってからも続いている。



でも、今日はなぜか冷たく出来ない。
甘えたいと思ってしまう。
いけない事だと分かっていても。



『でも、迷惑でしょ?明日も仕事なんだし。
大丈夫。多分もう見ないし、起こしたりもしないから。』



「待てよ。
オレも明理珠と一緒に寝たいんだよ。」



『……ツナ?』



「今日だけでいいから。」



例え、他に好きな人がいても、自分の上司だろうと、大好きな君に言われたら、断れないじゃん。



『今日だけだから。』



ベッドの中に潜り込む。
十五年ぶりの暖かな感覚。



『ツナ。』



「何?」



眠気が襲ってきた。



『……ホントはね、ツナの事……ずっ…と……す…き………大す……き…だ…。』



「ごめん、ありがとう。
オレも好きだ。」



君がそう言った気がするのは、もう夢の中だったからなのか。
それとも現実だったのか。



『……愛して…る…。』



朝起きたら、君はもういなかった。
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