短編

□純銀、輝きは目を潰すほどに
1ページ/2ページ


今日の空も曇天である。


この戦いが始まってから、鈍い色の雲が青空の邪魔をしている。


『なんで晴れないかなぁ?』


明理珠は屋根の上で呟く。


「何言ってんだ!
晴れてたら暑いだろーが!

縁起でも無いこと言うんじゃねーよ!!」


銀時は隣で空を眺めながら言う。

明理珠は悲しそうな顔をすると、『そーだね。』と言った。


『でも、こんな天気じゃ、布団も乾かないし、気分
までジトーってしちゃいそうじゃん。』


「なら、お前はいいのかよ。
戦ってる最中、ずっと汗でベタベタしてるんだぜ。」

銀時は不快そうな顔をする。


私は、もう一度空を眺めた。





江戸に大砲がぶち込まれて、何年が過ぎたのだろう、そんな事を考える余裕も
なく、皆戦ってきた。


ずっと一緒だった。

銀時と晋助と小太郎と、
ずっと4人だった。

寺子屋でも、戦争の間も。

だから分かる。

皆、焦っているのだ。

この負けそうな戦に…。



「青空、見たいなぁ。」


あの、皆で見た青空。


桜を見ながら、

川で遊びながら、

団子を食べながら、


楽しかった日々と共に過ごした青空。



それが帰ってくれば、皆でまた…。


「明理珠…。
生きてるか?」

『えっ…。あっと、ボーっとしてた。
ごめん。

あたし、先に帰ってるわ!!』


「ああ…。」


そう言って、屋根から飛び降りる。


ふと、後ろを振り返ると、銀時が空を眺めていた。



明理珠は銀時が好きだった。

いや、現在も好きである。

しかし、今は戦争中である。
恋愛なんかに現つを抜かしていられない。

それ以上に銀時に、愛する人に迷惑なんか、かけたくない。
彼は戦場でも先陣を切って戦っているのだから。



青空を見れば、なんとなく諦めがつく気がしたのだ。

せめて、いつ死ぬのか分かんないのだ、早く諦めて、彼の【護りたいもの】を守る助けがしたい。


急に降り始めた雨が、明理珠の頬を伝った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ