短編

□浮気×嫉妬=
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『あの、俺様め!
調子に乗りやがって!』


女が乗り込むのは、某俺様天使の大きな家。
自分の質素なアパートを思い出し、正反対なその家に、より怒りを覚える。

門を一蹴りしても、怒りは治まらない。
彼女が扉を開くと、そこにはいつものドヤ顔が……。


「明理珠、よく帰って……。」


『じゃないわよ!』


明理珠の声と、扉の閉まる音が重なる。


『いつも、いつも。
人に何でもかんでもやらせて!
花村さんに、全部任せれば良いじゃないっ!!』


「え…?なんで怒ってんだ……?
ちょっ……。」


『何でもクソもないわ。』


ことの起こりは、前日……。


――――――――――――


その日も、明理珠は日課である家政婦もどきをしていた。
面倒と思うこともあるが、惚れた弱み故に、この仕事が好きだったりする。

その日も、いつものように続の明るい「よく帰ってきたな」で始まった。
明理珠も「ここは私の家じゃないっ!」と、いつもの調子で返す。
そして、花村の手伝いをしたり、続の部屋を片付けたり……。
時間はすぐに過ぎ、続の「帰るなー」を聞きながら、表面には出さない喜びを噛みしめて、帰路についたのだ。
そこまでは、いつもの日常。
何の変哲もない日なはずだった。


「あれ?明理珠じゃん。」


『うげっ……。』


余計なに捕まったと思う明理珠に、日向はニヤニヤ笑いながら近づく。


「あの純血天使サマんとこ?
よく飽きねーな。」


『ま、まあね。』


確かに、付き合い始めて半年も経つに、倦怠期らしいものもない。
浮気することもなく、優しい俺様でいてくれる。


『まあ、浮気なんてしてたら、私が潰すけど。』


「女って、コワッ。」


すると、日向は真剣な表情で考え込む。


「じゃあ…あれは……。」


『何、どうかしたの?』


「言ってもいい?」


『気になるから、言って。』


「続と月宮が、浮気してた。」


『はあ……!?』


明理珠は呆れたような表情を浮かべる。


『続はないよ。
月宮となら、なおさら。』


「いや、本当に……。」


『ないない。』


明理珠は、日向に背を向けて歩きだす。


「いや、ホントだって。」


『してたら、バレてるよ。
続はバカだから。』


「いや、マジで……。」


すると、明理珠がカフェに月宮を見つける。


『あっ、噂をすれば……。
月み……!』


「おいっ!」


明理珠を遮るように、月宮の前に現われたのは、続だった。


『う…嘘……。』


「だから、言ったじゃん。」


明理珠が固まる一方、日向は鼻で笑う。


「結局、アイツも男だってことだよな。」


『うるせー……。』


「え。」


『こんの、クソヤロー!!』


明理珠は、おもいっきり日向を殴り飛ばした。

その後の記憶はない。
ただ、朝目覚めたら、ベッドの上で目を真っ赤にさせながら、眠っていた。
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