短編

□あんなに遠くにいたあなたがこんなにも近くにいる
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『何、ボーっとしてるの?』


「別に、何もねーよ。」


『顔、真っ赤だけど?
熱でも、あるんじゃないの?
ってか、日向が熱とか……ププッ。』


「熱じゃねーって!」


それまでもだったけど。
あれから増して、こいつの前で余裕が持てない。


『バカでも、風邪ひくんだね。』


「ちょっ、ばかっ!
近いんだよっ!!」


俺の額に、明理珠の額が……。


『これぐらいで、そんな顔しないでよ。
逆に、こっちが恥ずかしくなるわ。』


「おいっ。」


『日向って、乙女みたいね。
そういう可愛い反応されちゃうと、惚れちゃいそう。』


笑う明理珠に、俺は何かが切れる。


「じゃあ、惚れろよ。」


『え……日向?』


「好きなんだよ、お前が。」


俺に押し倒された明理珠の顔が、みるみる赤くなっていく。
もしかして、こいつ……。


「意外と、こうされる方が好き?」


耳元で囁いてやると、余計に赤くなる。
やはり、予想通りだ。


「あははっ。
お前の上っていうのも、案外いいな。
ってか、下の方が好きなんじゃないの?」


『何言ってんのよっ!
これは、相手が日向だからであって……って……。』


明理珠の顔が、これ以上ないくらい、赤くなる。


「それ、ホント……?」


『嘘……じゃない……。』


「明理珠!!」


『ぎゃああああ!
抱きつくなっ!!』


俺は、下から明理珠を見上げる。


「好きだぜ、明理珠。」


『…………!!』


普段は強気なフリをして、本当は攻められるのが好きな彼女。
まあ、俺限定だけど。

それが分かっただけでも……。


んなに遠くにいたあなたがこんなにも近くにいる


〈せっかくだし、このまま……。〉

《変態!!》

〈ぐはぁっ!〉

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