短編

□隣で笑っていてくれるのなら
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今日は、朝もギリギリセーフだったし、無事に終わりそうだ。


「珍しいな、おまえがドジらないなんて。」


「おめでとー。」


卍里とカルタに褒められ(?)ちょっと嬉しい。


「そういえば、今日は作文の提出じゃなかったか?」


『そうだけど。
……って、ホントに不良?
そういうの、ちゃんと覚えてるから、不良になれないんだよ。』


「どういう意味だよ!」


教卓に出そうと思い、鞄を漁るが、目的の原稿用紙が見つからない。


「どうしたの?」


『忘れちゃったかもっ!』


「へっ。
絶対、やると思ったよ。」


『いやいや。
マズいって!これだけは困るよ!!』


「何だよ。
いつものことだろ、忘れ物は。
きっと、おまえのSSが……。」


『それがマズいんだよっ!』


そんな、ベタな。
あの作文を見られたら……見られたら……。


『カルちゃん、卍里くん。
私、双熾さんが来る前に帰る(逃走する)。』


「はぁ?」


『じゃあね!!』


「おっ、おいっ!」


階段を駆け降り(落ち)。
廊下を全力疾走(転けたままスライディング)。
そして、下駄箱を通り過ぎかけ、慌てて戻り靴を履く。


『アレだけは、アレだけはダメっ!!』


「何がですか?」


校門を出た瞬間、声がかかる。


『双熾さんっ!?』


「忘れ物ですよ。」


双熾さんは作文を私の手に乗せる。


「慌てて取りに帰らなくとも、僕がお持ちしますよ。」


『…………。』


「明理珠さま?」


『見ちゃいましたか?』


双熾さんは、変わらない笑顔で言う。


「いえ。」


『良かった……。
あっ、それじゃあ提出しに行かなきゃっ!』


私が校舎に戻ろうとすると、双熾さんの声がかかる。


「明理珠さま。
僕はあなたのSSです。
こうやって、明理珠さまと一緒にいられることが、僕にとっての幸せなんです。」


『え?』


「明理珠さまが、そこにいてくださることが……。
明理珠さまが、隣で笑っていてくださることだけが……。
僕の唯一の幸せなんです。」


『双熾さん……。』


「これからも、ずっと仕えさせてください。
ずっと笑顔を見せていてください。
それだけで、僕は幸せです。」


双熾さんは、赤みがかった綺麗な笑みで、そう言う。


『それは、私もです。
こんな私だけど……ドジな私だけど……。
これからも、ずっと支えてくださいっ!!』


双熾さんに負けないくらいの笑みで言った。


隣で笑っていてくれるなら


〈それにしても、明理珠さま。
僕より明理珠さまの笑顔の方が素敵ですよ。〉

《え?》

〈優しさも気配りも、何もかも。
明理珠さまに優るものは、ありません。〉

《そっ、そんなことないですよっ!》


〈僕も明理珠さまが大好きです。〉


《あっ、ありがとうございますっ。
……って、やっぱり読んでたんですね!!》

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