上田の忍姫(BRAVE10・才蔵夢)

□ACT4.豊作の祭
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上田で行われる、奉納祭。
その会場に悠紀はいた。


『幸村様、楽しそうだね。』


「そうですね。」


六郎の横に立つ悠紀は、舞台で生き生きとしてる幸村に、手を振る。
幸村も、それに応えて、手を振る。


「皆の者。
今年も豊作でなによりじゃ。
おかげで、真田も食っていける。

ささやかながら、これはその礼だ。
大いに飲んで、食ってくれ!
そして、来年も頼む。
豊作に!!」


「「「豊作にー!!」」」


『豊作にー!!』


慌てて、遅れながらもやる悠紀に、六郎は笑みを浮かべる。


『なっ、何で笑うのっ!』


「いえ。
悠紀らしいなと。」


すると、幸村が席に帰ってくる。


「うむ!
重畳、重畳!」


「くれぐれも、正体なくさないようになさってくださいよ。
若!」


『そうだよ。
歩けなくなったら、誰が運ぶと思ってんの!?』


「ん?
悠紀ではないのか?」


『運べるわけないじゃないっ!!』


幸村は六郎と悠紀に酒を押しつける。


「ホレ、六郎!悠紀!」


「けっこうです!
酒など入っては、いざというときに困りますので。」


『私も……ちょっと……。』


「なんだ、面白くない奴だな。
……さては、弱いか?」


『っ!』


「いいえ。
仕事中ですので、ご遠慮申しあげているだけです。」


「その堅苦しいのを、今日ぐらいは解いたらどうだ?
今年は、なかなか楽しめると思うぞ。
特に…神楽舞がな。」


『だから、ちゃんと場所取りまでしてるんだよ!』


すると、幸村は思いついたように言う。


「なあ、悠紀。
団子を買ってきてくれんか?」


『え、団子?』


「ついでに、好きなものも買ってきていいぞ。
今日は、甘味の出店が多かったしのう。」


『甘味!』


幸村に渡された小銭を大事に抱え、悠紀は走り出す。


『幸村様〜!
ちゃんと場所、取っておいてねっ!!』


「分かった。
一番良い席を、取っておくぞ。」


満足気な悠紀の背中を見ながら、幸村は呟く。


「普通の女子のようだのう。」


「そうですね。」


神楽舞の時間は迫っていた。


――――――――――――


『伊佐那……海?』


前方から歩いてきたのは、不機嫌な伊佐那海。


「悠紀〜!」


『どうしたの!?』


涙目の伊佐那海は、悠紀に抱きつく。


「才蔵がっ……。」


『才蔵がどうしたの?』


「お祭り……回ってくれなくて……。」


悠紀は伊佐那海の頭を撫でる。


『分かった。
じゃあ、伊佐那海の神楽舞、絶対に連れていくよ。』


「悠紀!!」


『その後、一緒に回ればいいじゃない。
ね、どう?』


「うん。」


伊佐那海は少し機嫌を直したようだ。


「伊佐那海様、早く……。」


『じゃあ、才蔵を探してくるね!!』


「うん。」


悠紀は才蔵を探して、走りだす。


『伊佐那海が嬉しいなら、私も嬉しい……はずだよね……。』


少しだけ感じた違和感に、気づかないフリをして……。
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