上田の忍姫(BRAVE10・才蔵夢)
□ACT3. 暗中の光
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暖かい日差しが降り注ぐ中、才蔵と悠紀は屋根の上にいた。
『平和だね。』
「……ヒマだ。
なぁんもねえ。」
『それが一番だよ。』
才蔵の前に、小鳥が降りてくる。
「お。また来たな。
一回やったら、味をしめたか。」
才蔵は、小鳥達に餌をやる。
『可愛い。』
「悠紀もやるか?」
『やってもいいの?』
「許可もらうほどのことでもねえよ。」
小鳥に餌をやる悠紀を見ながら、才蔵が呟く。
「――――体…なまっちまうなあ…。」
『どうかした?』
「何もねえよ。」
『?』
その時、廊下を歩く女中の声が聞こえる。
「もう20人だって!!」
「本当に!?
気味悪いわね!」
「なんでも、大蛇[うわばみ]が、人を生きたまま飲み込むんですってよ!
昼間も出るから、米の収穫がままならないって。
村から直訴状が幸村様に…。」
「幸村様に!?
……大丈夫かしら?」
悠紀は才蔵を見上げる。
『うわばみだって。
なんか、物騒……。』
すると、忍集めの笛が鳴る。
『才蔵!』
「ああ。
こりゃ、なにかあるぜ!」
――――――――――――
「――――つう、わけで。
お前らに里に出没している、うわばみ退治を命ずる!
このままじゃ、米を上納してもらえん!
食いっぱぐれるのは、ゴメンだ!」
幸村の表情は、この上なく真剣だ。
隣で頭を抱える六郎に、この時ばかりは同情する。
「今年の冬を乗りきれるかどうかは、お前らにかかっておる!」
「は。」
「頼んだぞ!
佐助!指揮は任せる!」
「承知。」
「早々に退治してくれ!」
「諾!」
アナが幸村をからかう。
「早くいなくなってもらわないと、女のところにも通えないものねえ。」
「うっ。」
「無礼!」
そこで、柱に寄りかかって聞いていた才蔵と悠紀も、顔を出す。
「俺も行くぞ!
久しぶりに、体動かせそうじやねえか!
退屈しのぎにゃ、ちょうどいい!」
「否!
これ、我らの仕事!」
『佐助、行っちゃダメ?』
「いや……悠紀は……。」
「まあまあ、一緒に連れてけ。
邪魔になることはあるまい。」
アナが、悠紀と才蔵の腕に絡む。
「じゃあ、私と組みましょうよ。
才蔵、悠紀。
佐助の奴、私が伊賀出身だってだけで、毛嫌いすんのよ!」
「俺も甲賀者は好かん!」
「……どっちもどっちね。
アンタたち…。」
悠紀は、哀しそうに目を伏せる。
『それなら、佐助は私も嫌いだよね……。』
「否!
我、悠紀のこと…。」
「そうだな。
だから、悠紀に近づけないよな。」
『そっか…そうなんだ…。』
「そうよ。
だから、近づいたら可哀想だわ。」
『うん。
ごめんね、佐助。』
涙目の悠紀に、佐助は必死で弁解する。
その時、才蔵に悪寒が走った。
「アタシも行く〜。」
襖が開き、真っ暗な部屋から目を光らせた伊佐那海が出てくる。
もちろん、その目は才蔵と悠紀の腕に絡まった、アナの腕だった。