上田の忍姫(BRAVE10・才蔵夢)

□ACT1.上田のお城
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憎らしいくらい、晴れ渡った空。
その下で、二人の男女がしゃがんでいた。


「あー……。」


『お腹……空いたね……。』


「何度見ても、金がない……。」


『お金は増えないよ、才蔵……。
お腹空いた……。』


「そりゃ、もう3日もなにも食ってねえからな。」


『お金も……無いもんね……。』


どんより沈む二人に、通りかかった親子の声が聞こえる。


「おっ母、あれなに!?」


「見ちゃダメ!!
たかられるよ!!」


その言葉に、才蔵は反応し睨む。


『才蔵、ダメだよ。
人を睨んだりしちゃ……。』


「わっ、悪ぃ……。」


その時、二人の腹が鳴る。


「(このままじゃ、餓死決定だ!
俺はまだしも、コイツが危ねえし……。
また戦で稼ぐ……つーか、最近は戦ねえし。

こうなりゃ、どっかの大名の家臣にでもなって…………っつ。)
――――って、この霧隠才蔵ともあろう者が、情けねえ!
自分を安売りして、どーする!!」


『うんっ!
その意気だよ、才蔵!』


「――――…この広い天下に、俺の居場所ってのは、ないのかね…。」


しかし、急に立ち上がった才蔵は、ふらつき膝をつく。


『起立性貧血ってヤツだよね。
大丈夫?』


「大丈夫……じゃねえかも……。」


すると、草むらから音がする。


「あ?」


『野犬?』


そこから現れたのは、必死の形相の女だった。


『才蔵っ、来る!』


「!!!」


才蔵は女を担ぎ、飛んできたクナイを弾き落とす。


「フンッ。」


『お見事っ!』


才蔵は、追ってきた男達に視線を向ける。


「んだ、テメエら!?
女相手に、楽しい鬼ゴッコか?
あ!?」


「……お前達には関係ないが、その女を見たのが不運…。
消えてもらう。」


「物騒だねえ。
目撃者必殺!?」


「その通り!!!」


「きゃああ!!」


再び飛んできたクナイに、才蔵は刀に巻かれた布を切る。


「オン・マリシエイ・ソワカ!!」


才蔵の刀、摩利包丁の文字が光る。
すると、飛んできたクナイも止まる。


「なっ…なんだっ…。」


「奥義、天唾返し!!」



クナイは跳ね返され、男達に向かって刺さる。


『私が出るまでも無かったな……。』


「――ったく、腹へってるのに、よけいな体力使っちまった。」


才蔵は女を下に降ろす。


「おっと、すまなかったな。
テメエを離して、的にされると、やっかいだったんでな。
ホラよ。」


「す…す…。」


「あ――――怖かったか。」


『才蔵。
やっぱり、目隠ししてあげたほうが、良かったんだよ!』


しかし、顔を上げた女は笑顔だった。


「すっごーい!
すごい強いのね、アンタ!
もしかして、かなりの手練!?」


「もしかしてって、見たろ?
今のワザ。
あ!?
それより先に、礼だろ?礼!」


「このぐらい強いなら、女の子ひとり守るくらい、お手のもん!?」


『聞いてないよ、才蔵。』


才蔵は悠紀を掴み歩き出す。


「あー、まあいいや。
この先、気ィつけてな。
じゃ。」


「あーっ、あーっ。」


女は才蔵の袖を掴み、離さない。


「なんだ、離せよ。」


「さっきの奴ら、見たでしょ。
男だったら、助けてやろうと思うのが、フツーでしょ。
情けない!」


「情けない!?」


『た…確かに一理ある……。』


「どういう意味だ!」


「だから、アタシと一緒に、信州上田まで行かない!?」


「は!?」


その時、二人の腹が鳴る。
すると、すかさず女が言う。


「おソバ、おごってあげるよ!?」


『あっ、ありがとう〜!
どこまでも、ついていくよ!!』


「餌付けされてんじゃねえよ!!」
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