桜契り(妖狐×僕SS・御狐神寄り)

□第十四話 働く猫
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『え?バイト?』

「この間、御狐神に言ってたでしょう。
良かったら、私の仕事を手伝わない?」


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桜稀は、野ばらと反ノ塚と一緒に、とある村に来ている。


『野ばらが、副業をしているとは知らなかったな。』


「ふふ。
あまり言う機会が無かったからね。
それなりに、収入もあるのよ。」


野ばらの副業である、霊障相談。
その仕事を手伝いに来た。


「で、それって妖怪のしわざなの?」


「多分ね。
学校で人が消失したの。
文字通り消えたんですって。」

『神隠しか。』


「消えた女性の周りでは、ここ最近謎の怪奇現象が頻発していた。
依頼主である彼女の家族が、目撃してるわ。
警察に届けを出すも、進展はなし。
藁にも縋る思いで、こちらを頼った、と。
ちなみに、コレが消えた女性よ。
かっわいいでしょ〜!?」


野ばらは写真ににやけていた表情を引き締め、反ノ塚を睨む。


「ところでアンタ。
ついてくるのはいいけど、邪魔しないでね。
桜稀は離れちゃダメよ!
私が守るんだから!」


「このテンションの差。」


「あのぅ。」


三人が振り向くと、年配の男性がいた。


「【野薔薇霊障相談所】の方でしょうか…。
私、依頼をした者ですが…。」


おじさんは、三人を学校に案内する。


「ここが、例の学校ね。」


「はい…。
学校側に、話は通してありますので…。」


「じゃあ、色々見せてもらうわ。
でも、よくすんなり許可がもらえたわね。
最近は学校への部外者の出入りは厳しいのに。」

「特に、こんな怪しげな職業のなぁ。」


「都会の大きな学校なら難しかったかもしれませんが。
ここは、創立60年以上の古い学校ですから。
村の人間は、ほとんど親戚ばかり。
生徒も職員もそうです。」


「アットホームな学校て感じか。」


「良いじゃない、レトロで。
体操着もレトロかしら。ブルマかしら。」


『野ばら。
色々ズレてる。』


「野ばらちゃん、おびえてるから。」


野ばらは廊下を歩き始める。


「今から、どんな事すんの?
聞き込みとか?」


「しないわよ。
適当に時間を潰すだけ。」


「え。」


「何もしなくても、妖怪は出てくるわよ。
逢魔が刻が来ればね。
あたし達、先祖返りの匂いにつられて。
自分とは、似て非なる存在の匂いは、妖怪の興をさかすわ。」


『流石、仕事にしてるだけはあるな。』

すると、廊下で離す二人の少女を発見する。


「お、生徒だ。」


「ちょっと質問いいかしら。」


「早!」


『の…野ばら…。』


二人も、慌てて野ばらを追う。


「え。」


「あたし、探偵みたいなものなの。」


「た…探偵…!?」


野ばらは写真を見せながら尋ねる。


「この人について教えてくれる?
変わった様子があったとか、何でもいいの。
性格とか、交友関係とか、身長とか体重とか3サイズとか下着の好みとか。」

「マキちゃん…。」


「優しくて、静かだったよ。」


「うん。
起ったトコとか見た事ないー。」


「人気だったし…。」


「居なくなっちゃって、みんなすごく心配してるの…。」


「マキちゃんを探してくれるの?
マキちゃんの事、お願い…!」


「ええ、勿論よ。
お願いされたからには、宜しいしないとね…!」


「君達、危ないよ。」


二人組は桜稀と連勝を見る。


「お兄さんたちも、お仕事がんばって下さい。」


「俺ら、学生…。」


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時間が流れ、オルゴールの曲が流れる。


「この曲、なんだっけ。
卒業の…?」


『蛍の光だろ。』


「そうじゃない?」


下校していく生徒を眺め、野ばらは呟く。


「あと数日で冬休みでしょ。
3学期になったら、3年は卒業だし。
一瞬の儚い輝き。
思春期という、脆く危うい壊れ物。
それは、汚れ易い白いセーラー服そのもの…。
メニアック…。」


『あと、三ヶ月……か。』


「その時期真っ最中の俺には、よく分からんが…。」


「通り過ぎてから見る景色が、一番美しく見えるものよ。
すぐに分かるわ。」


すると、廊下の橋から狸のような動物がやってくる。


「…狸?
渡狸のオトモダチ?」


「…まあ、そうとも言えるかもね。」


『それにしても、なんでこんなところに…。』


反ノ塚の袖に、ひずめがかかる。
その瞬間に空間が歪み、闇に包まれる。


「何だぁ!?」


「【袖引き狢】
袖を引かれた者は、まるで夢のように感じられ。
【帰ろう、帰ろう】と、どこかからか呼ばれ、そのまま連れ去られてしまうの。
ほら、さっそくよ。」


闇の先から、【帰ろう】と声が聞こえる。


「予定通り。
さあ、行くわよ。」


『ああ。』


「え、行くの?」


「当たり前でしょ。
かわいい彼女を♥」


「ちょーこえー。」


『文句を言うな。』
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