桜契り(妖狐×僕SS・御狐神寄り)

□第十二話 励ます猫
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いつものラウンジ。
そして、いつもの会話。


「俺って、不良に見えないのか…⁉」


万里の言葉に、机で談笑していた高校生ズと桜稀、空琥は言葉を失う。


「逆に、君のどのへんが不良なんだ?」


そう吐き捨てたのは、凛々蝶。


「何…っ⁉
俺はタイ焼き、頭から食べちゃうんだぜ!!」


「どこからとか、気にした事もないが。」


「食えりゃ、なんでもいいぜ。」


「夜露死苦とか、言っちゃうんだぜ!!」


「ふつうに良い奴だと思われてるよ。」


「舎弟達と、集会開いてんだぜ!」


『近所のお爺さん達と、おしゃべりだろ?』


「ほほえましいよ。」


「盗んだバイクで走り出す為に、免許を取得するべく、家の手伝いしてんだぜ!」


「君は素直な子だな…。」


『なんだか、どんどんかけ離れていってるな…。』


凜々蝶は、素朴な疑問をぶつける。


「なんで、突然気にし始めたんだ…?」


「……学校で、反ノ塚に会った時…。
クラスの奴らが【反ノ塚先輩や桜稀会長と喋れるなんて、すげー】って、始めて一目おいたんだ!!
何で!?俺が、不良だよ!?」


「反ノ塚はカタギに見えないからな…。」


「桜稀は学内最強だしな…。」


「見てろぉ、反ノ塚!
俺は、おまえを超えてみせる!!
桜稀さんに並べるくらいになってみせるぜ!!」


「目標、俺に設定されちゃったよ…。」


「超える程の存在か?」


飛び出していった卍里を見送り、五人はテーブルを囲む。


「俺って、真面目で無害な生徒なのに〜。」


「明後日な目標だな…。」


「てか、桜稀まで巻き込むんじゃねぇよ!!」


『まあ……なぁ……。』


「それが、卍里坊ちゃんなのです…。」


その時、背後から声が聞こえる。
振り向くと、落武者が立っていた。



「坊ちゃんを悪く言わないで頂きたい…。」


「きゃー!!」


「渡狸のじいや…。」


「じいや!?」


『お久しぶりです、武蔵野さん。』


「おっちゃん!!
いい加減にしてくれよ!
いつも、後ろ立つなって言ってんだろ!!」


「失礼しました…。
坊ちゃんの世話係を仕めております…。
武蔵野と申します…。
坊ちゃんのお弁当箱の回収に参りました…。」


「あ、あの毎日お弁当を届けてくれるっていう…。」


「はい…坊ちゃんがご実家を出られてからも、陰ながら見守らせて頂いてます…。」


じいやから渡された写真を覗き込む。


「完っっ全に、神霊写真じゃん…。
ちょーこえええええ…。」


「坊ちゃんの事は、お産まれになった頃から、よく存じております…。
妖怪の先祖返りに生まれた坊ちゃんは、産まれてすぐ親元から離され、厳重に守られてきました…。
そんな坊ちゃんがお可哀想で、私は精一杯の愛情をもってお育てしてきたつもりです…。」


『卍里、かわいいな!』


「苦労知らずに、お育てしたせいか、少々世間知らずでして…。」


「え、この子が渡狸くん…?」


「イジメられる事もしばしばありましたが、そこは大人として仲裁しておきました…。」


卍里の写真に混じり、じいやが丑の刻参りしている写真が出てくる。


「えっ、何してる…!?」


『そういう人なんだよ。
でも、誰より卍里を大切に思ってくれてるんだ。』


「桜稀様、恐れ多いです…。
坊ちゃんは、確かに世間知らずのおバカさんですが、良い子なのです…。
坊ちゃんは不良の前はムエタイ選手に。
ムエタイ選手の前は仮面ライダーに。
その前は【杖屋さん】になりたいと仰っていました…。」


「杖…?」


「私が足を悪くした時に、でも杖を使うのはいかにも年寄りのようで嫌だと零したら。
〈じいやが持ちたくなるような杖を作ってやる〉と言って下さいました。
坊ちゃんが懐いていたメイドが冷え性で困っていた時には、アフリカに家を建ててやるとも言っていました…。」


『卍里らしいな』


「少々的外れですが…。
他人を想いやれる子なのです…。
仮面ライダーになりたいのも、ムエタイ選手になりたいのも、不良になりたいのも。
誰かの為に強くなりたいのでしょうね…。
これからも、坊ちゃんの事を宜しくお願いします…。」


じいやは床に座り込む。


「いいって、いいって。
頭下げるとか…。

…何で髪の毛、拾ってんの…。」


「坊ちゃんに何かあった時、大人として仲裁できるようにと…。」


『武蔵野さん。
とりあえず、ストップしようか。』
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