桜契り(妖狐×僕SS・御狐神寄り)

□第七話 悩む猫
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「久しぶりだな、肉便器ども!」


「いつもながら、悪ふざけがすぎますね…。」


『まったくだ。』


「ってか、桜稀の手を放せよ!
変態野郎っ!!」


凛々蝶は驚く。


「君の知り合いだったのか!?」


「なに?
何を言ってるんだ。
私の事を忘れたか、薄情者め。

私は、青鬼院蜻蛉。
双熾の元主人であり、貴様の婚約者ではないか。」


桜稀は蜻蛉を蹴り飛ばす。


『いい加減にしろ。
いつまで、俺の腕を掴んでるつもりだ!』


「そんなSなところも、可愛らしいな。
この前会った時より、細くなったのではないか?」


『触るなっ!』


桜稀は逃げるように歩きだす。


『早く帰るぞ。』


「昔は、もっと従順だったのにな。
よく、私の口調を真似してたというのに。」


『昔の話だろっ!!』


――――――――――――


『結局、眠れなかった。』


「俺も……。」


ラウンジに着いた桜稀と空琥の後ろから、蜻蛉の高らかな声がする。


「おはよう、ブタども!
昨夜、無事帰還したぞ!」


『「あーっ、もうっ!
うるせーっ!!」』


「かげたーん


叫ぶ二人を無視し、蜻蛉は桜稀を抱き締める。

『ちょっ、やめっ!』


「昨日は何度連絡しても、出なかったではないか。」


『出るわけないだろっ!
ってか、イタ電以外の何物でもねーよ!
夜中に何度も、電話してきやがって。』


「お前と私の仲であろう。」


野ばらが、全力で引きながら尋ねる。


「…誰!!?」


「2号室の住人だよ〜。
放浪癖があるから、あんまり居ないけどね〜♪
前に話した、幼なじみの一人だよ☆」


「久しぶりだな、M奴隷よ。」


「それで、成り立ってるんだ。
関係として…。」


渡狸は白目をむく。


「お…お…おまえ……。」


「おお!
貴様も居たか。
久しいな、家畜よ。」


渡狸は記憶がフラッシュバックする。


「ぎゃあああああ!!」


「ふははは。
良い声で啼くではないか!」


「桜稀姐ぇ…さ…。」


助けを呼ぶも、桜稀は蜻蛉に捕まっているままだ。


『すまない、卍里。』


「ってか、桜稀を放せよ!変態!!」


「貴様に言われても、何とも思わん。
なあ、桜稀。」


『私に振るな。
眠いんだ。』


渡狸を支えながら、残夏が言う。


「全員揃うのは、久しぶりだね〜。
ね、そーたん。」


「はい。
お帰りなさいませ、蜻蛉さま。
お会いできて、嬉しく思います。」


「昨夜は、なかなか楽しかったぞ。
しばらく、宜しく願おう。」


双熾は、ずっと張りつけたような笑みを浮かべている。


「そうだ。
貴様達に土産があるのだ。」


『やっと、離れられた……。』


「桜稀!
しょっ、消毒を!消毒を!!」


蜻蛉は、沖縄土産を配り始める。


「鞭だ!」


「沖縄無関係だ。」


「貴様は、初対面だな。
では、お近づきのしるしに、ボールギャグを…。」


「近寄ったら、凍らすわよ。
男で、しかも変態で、名前も名乗らない奴とは、お近付きになれないわ。」


反ノ塚を盾にする野ばらに、蜻蛉は笑みを浮かべる。


「一理あるな、メス豚よ!
私の名は、青鬼院蜻蛉。
2号室の住人であり、カルタのご主人様だ!

加えて、双熾の元主であり、白鬼院凛々蝶の婚約者だ。」


「婚約者…!?」


「あ――。
そーいや、そんなん居たなぁ。
毎日、手紙書いてたろ?
結構気に入ってたんじゃねーの?」


「違う!」


凛々蝶はうつむく。


「くだらないな。
家同士が勝手に進めた話だし、拘束力はない。
現に、子供の頃以来、会っていないし、ほとんど消えた話だ。」


「でも、手紙来なくなった時は、落ち込んでたじゃん。」


「ふん。
字の練習ができなくなった事を憂いていたんだ。」


蜻蛉は桜稀の肩を抱く。


『なっ!』


「私も、同じだ。
貴様よりも、桜稀の方が調教のしがいもあり、面白い。」


『何を言ってんだ!』


「というわけで、共に来い。
私は、またすぐにここを出るつもりだからな。」


『何で、そうなるんだ。
それに、私には学校が……。』


「そんなもの、私の嫁になるのに、必要ないではないか。
お前なら、問題無く青鬼院に嫁いでこられるはずだ。」


蜻蛉は桜稀を放す。

「今日は土曜だ。
帰ったら、ゆっくり話すとしよう。」


「絶対にお断りだかんな!
桜稀をお前んとこなんて、不安で仕方ねえ!」


「そうだ、許婚殿。
大事な話があるのだ。」


『っ!
蜻蛉っ、話なら俺が聞く。
だから、早く行け。』


双熾の目が据わっていたのに気づいたのは、一体何人だったのだろうか……。
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