桜契り(妖狐×僕SS・御狐神寄り)

□第六話 捜す猫
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シャワーを浴びて、出てきた桜稀の携帯に、メールが届く。


『何だ……?』


メールを開くと、そこには〈モウスグアエルヨ〉の文字。


『……またか。』


こういうメールは無視するに限る。
というわけで、桜稀は受信拒否に設定しているのだが……。


『ダメだ……。
何故、メアドを変えてもメールがくるんだ。
気持ち悪い。』


桜稀は携帯をベッドサイドに置いて、目を閉じる。

しかし、10分も経たない内に、再び携帯が鳴る。


『あーっ、もうっ!
出てきたら、シメてやる!!』


携帯を一度壁に投げ、電源を切って、床に着いた。


――――――――――――


校舎の前に、人集りが出来ている。
原因は、双熾と空琥にあった。


「桜稀、目に隈が出来てるぜ。」


『分かって……。』


「肌も、いつもよりツルツル感がないじゃないかっ!」


『仕方ないだろ、寝れないんだから……。』


桜稀は空琥を軽く無視しながら、凛々蝶を見る。


『(あれよりはマシだ……多分……。)』


「ご苦労だな。
じゃあ、もう行くから…。」


「ああ…今日も完璧です凛々蝶さま。
もっと、こうして凛々蝶さまを見ていたい…。」


「そうか、行かせる気ないな?」


すると、空琥は桜稀の顔を、自分に向かせる。


「双熾の方ばっか、見るんじゃねーよ。
お前のSSは俺なんだぜ。」


『分かってるよ。』


「分かってな……。」


凛々蝶が桜稀の手を掴む。


「君達に構っていたら、遅刻する。」


「凛々蝶さま…桜稀さま…。
申し訳ありません。
お二人を、困らせてしまって…。
本当は解っているのです。
少しでも長くご一緒したいなんて、下僕[いぬ]の身には過ぎた願いであると…。

凛々蝶さまにお仕えできるだけでも、桜稀さまの傍にいられるだけでも。
光栄だと思わなければいけないのに。
僕は卑しい家畜です…。」


「い、いや。
そこまでは…。」


「では、願ってもいいのですか?」


「良い。」


「では、授業が終わり次第、すぐ出て来て下さいますか?」


「問題ない。」


「その後は、ずっと一緒に居て下さいますか?」


「朝飯前だな。」


双熾は桜稀を見る。


「桜稀さ……。」


「桜稀は、今日も生徒会活動だぜ。」


遮ったのは、空琥だ。


「だから、早くなんて無理だ。」


「…………。」


「はっ、早く終われないのか?」


「はっ、ちっこいの!?」


「1時間くらいなら、待てるし……。」


桜稀は凛々蝶の頭を撫でる。


『分かった。
出来るだけ、早く終わらせよう。』


凛々蝶は双熾にサインを送る。


「凛々蝶さまは、本当にお優しい素晴らしい方…。」


双熾はふわりと笑みを浮かべる。


「桜稀さま。
待っていますね。」


『待てなければ、先に帰って構わないから。』


その時。
桜稀は、凛々蝶に向かって飛んでくるボールを見つける。


『危ないっ!』


桜稀が凛々蝶を庇うが、その前に双熾が立つ。
そして、飛んできたボールを片手で受けとめる。


「す、すいません。」


「いいえ。」


「手は……っ。」


凛々蝶は心配そうに尋ねるが、双熾はいつもの笑みのままだ。


「はい、大丈夫です。」


「【大丈夫】って…。」


「ご心配は無用です。
こんな時の為の、SSですし…。
凛々蝶さまの盾になる事こそ、喜びなのですから。」


双熾は桜稀に言う。


「何よりも、桜稀さま。
盾になるのは僕の仕事です。
桜稀さまの顔に、傷がついたりでもしたら。」


「そうだ、そうだ!」


『すまない、つい……。』


「桜稀は仕方ねーよ。
そんな格好良い所が好きだっ!」


「これからは、僕に任せてくださいね。」


「そうだ、そうだ!
盾にしてやれ、盾に!」


『そうはいかな……って、うるさいぞ!
この、バカがっ!!』


しゅんとする空琥に、凛々蝶が声を掛けようとするが……。


「予鈴…。
今日は、一時間目から調理実習…。」


「行ってらっしゃいませ。」


カルタに引きずられながら、桜稀と凛々蝶は校舎に向かった。
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