薄桜学園3年Z組
□嬉しい時くらい、素直に喜びなさいっ!
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『また子、もういいわ。』
「はっ、了解です。姐さん!」
【高杉椿】
薄桜学園高等部3年Z組在籍
不良グループ【鬼兵隊】ナンバー2
そして、沖田総司の彼女である。
『向こう[四輪花]と同じで、ちょっとやそっとじゃ死にませんね。』
「椿……?」
『まあ、そうでなければ死より苦しい目に会えないもの。
良かったわ。』
「ちょっ、ちょっと……。
本当に椿、大じょ……。」
『また子。』
「はっ。」
椿が合図すると、部下の来島また子が銃を発砲する。
「すっ、ストップ!ストップ!!」
『また子。』
「はっ。」
椿は立ち上がり、日本刀の鯉口を切る。
「椿ちゃん。
それ、銃刀法違反……。」
『問答無用!!』
椿が斬りかかり、沖田がそれを避ける。
『あの子って、誰なのよ!?
このドスケベ!変態!!総司さんの浮気者!!!』
「椿、危ないっ!」
椿は何も考えずに、刀を振り回す。
「椿、下ろし……っ!」
『もう知らないものっ!
どこに行こうが、知ったこっちゃないもんっ!!』
その時、椿の手から、刀がするりと抜ける。
『きゃっ!』
「姐さんっ!」
「椿!?」
総司は椿を走り飛び、抱き抱えて地面を転がる。
「心配したじゃんか。」
『なっ!?
今さら、彼氏面しないでください!!』
「別に、僕は彼氏面してるんじゃなくて、彼氏……。」
『浮気してる人を、彼氏とは言いません。』
「僕は浮気なんかしないよ、君しかいないんだから。」
それでも、椿は睨むのを止めない。
「あのテストは……恥ずかしかったんだよ。」
『採点する土方先生は、私達のこと知ってますよ。』
「だからだよ。
土方さんは敵なのに、惚気話とか、恥ずかしいじゃんか。」
『近藤さんなら、言えるのに?』
「君だから、言えないんだよ。」
『バカ。』
「知ってる。」
そんな甘い雰囲気を壊す、一人の女。
「流石、姐さんと兄貴!
これこそ、絵になるってヤツっスよねっ!」
『……………また子。』
「はいっス!」
『空気を読みなさい。』
「もっ、申し訳ありませんでしたーっ!」
すると、椿が地面に落ちた紙に目をやる。
『あれ……。』
「さっき、学ランが破れて落ちたのかな……?」
『もしかして……。』
総司はニコッと笑って言う。
「一緒に行かない?」
『っ…………仕方ないですね。』
そう言う椿も、万更ではなさそうだ。
「姐さん、晋助様は絶対に足止めしておくので、楽しんでいって下さいっス!」
『また子……ありが……。』
「誰が、足止めされるんだァ?」
声に三人が振り向くと、そこには高杉の姿があった。
「いい度胸じゃねェか。
大事な兄様には黙って、二人でデートかァ?」
『にっ、兄様……。
これは……。』
「椿、逃げるよ。」
『ほえっ!』
総司は椿の手を引き、高杉の隙をついて、扉をくぐる。
「ちなみに、お兄さん。
これはデートじゃなくて、【逃避行】だから。」
「なっ!」
「じゃあね。」
逃げる二人に、追いかける兄。
当分、この関係は変わらないらしい。
嬉しい時くらい、素直に喜びなさいっ!