薄桜学園3年Z組
□あれ……?マジで、このクラス!?
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住宅街の中の、一本の通学路。
そこを駆け抜ける一人の少女がいた。
『やっべぇ!
3年の1学期早々、遅刻はねぇわ……。』
どこぞのギャルゲーの如く、パンを咥えているわけではいない。
むしろ、白髪と長いスカートが、一昔前のスケバンを彷彿とさせる。
彼女の名前は【坂田蓮】。
薄桜学園の三年生である。
『この時間、走ってそーなのは……。』
すると、横を白い高級車が通る。
車は蓮と同じスピードで走る。
『この嫌味のように白い車体は……。』
「文句を言うなら、乗せんぞ。」
『まあま、乗れよ。
お前も遅れそうなんだろ?』
窓から現れたのは、【桂蘭】と【風間千景】である。
蓮が乗り込むと、広々とした車内には、【天霧九寿】【不知火匡】といった、生徒会メンバーが乗り込んでいた。
『ありがと!
この仮は……いつか返す。』
「売店の焼きそばパンとメロンパン。」
『はい、了解しました。』
すると、車の横にバイクが並ぶ。
そこには、紫の髪の柄の悪い兄妹が乗っている。
『あ、高杉兄妹じゃねーか。』
『はよー、椿。
てことは、遅刻決定か。』
『勝手に決めつけないで、大丈夫に決まってるわ。
ねえ、兄様?』
「さァな。」
『ちょっ、兄様!?』
すると、学校の校舎と共に、二人の男子生徒の背中が見える。
『『『うわ……遅刻だ。』』』
車とバイクと男子生徒が校門の前に止まったのは、同時だった。
それと同時に予鈴が鳴る。
「あ、椿達も遅刻?」
「よくある光景でさァ。
こうなったら、全員で仲良く指導室行き……。」
『『ぜってー、嫌だ!』』
椿はW沖田に言う。
『総司さん達も相変わらずですね……。』
一行は、門の前に立つ三人の男子生徒を見つめる。
「どんな顔をしようと、ここを通すわけにはいかん。」
「とりあえず、失点ね。」
「そういうことだ。
観念しろ。」
風紀委員の【斎藤一】と【南雲薫】。
そして、副委員長の【土方十四朗】もいる。
『お前ら、非情だ!』
『そうだ、そうだ!
生徒会長様と副会長様と、その他もろもろを、ちょっと通してくれるぐらい。』
「誰が相手だろうが、あんた達の遅刻の理由が寝坊だと理解している時点で、通すわけにはいかない。」
「ついでに言や、蓮や総悟、総司は風紀委員じゃねえか。」
十四朗の言葉に、三人は知らん顔をする。
「とりあえず、全員で指導室行き……。」
『ちょっと、お待ちを……。』
椿は手元の写真を二枚、一と薫に投げる。
「ふっ、そうきたか。
いいよ、通してあげる。」
「っ……確かに、チャイムと同時と言えば、そうだな。
副委員長、さっきのはギリギリですが、許容範囲内であったように思われます……。」
「一、南雲?
何、言ってやが……。」
「土方さん、しつこいでさァ。
そんなのだから、いつまで経ってもモテないんでさァ。」
十四朗は言い返そうとするが、返す言葉もなく、言い淀む。
「さっさと道を空けてもらえない?
僕達、急いでるんだけど……。」
「そうだな。
早くクラスを確認して、教室に向かうべきだろう。
こいつらは。」
すると、校舎の方から声がする。
「確認の必要はないぜ。
お前ら全員、俺らのクラスだ。」
そこに立っていたのは、【土方歳三】と【坂田銀八】の二人だった。