薄桜学園3年Z組
□さあ、体育祭だ。
1ページ/5ページ
青い空、白いテント、砂埃の舞うグラウンド。
決戦の時は来た。
二列縦隊で並ぶ3Zの目は、闘志に満ちていた。
「ただいまから、体育祭を開催する。」
「「『『うおおお!』』」」
風間の一言に、3Zだけが雄叫びをあげる。
「浮いてますね……。」
『そうね……。』
若干の常識人には、居づらい状態だ。
しかし、【赤信号、皆で渡れば怖くない】方式な3Zには、常識なんて存在しない。
「3Zの皆が、やる気になってくれて良かった……。
な、トシ。坂田先生。」
「そう……だな……。」
「ああ……。」
二人の視線の先には、バカ校長の姿が……。
「まあ、考えてても仕方ねーし。」
「とりあえず、勝ちゃいいんだろ?
俺ら[3Z]が。」
不敵に笑う銀時と歳三に、近藤は首を傾げるのだった。
〜プログラム一番・ラジオ体操〜
軽快な音楽と共に、3Zは全力で手足を振る。
なぜなら、ラジオ体操でさえも、演技として点数が加算されるのだ。
今回ばかりは、シャイな面々も、全力でやるしかない。
「土方さん、肘が当たった。」
「土方、腕が当たった。」
左と斜め後ろをW沖田に挟まれた十四郎は、鬱陶しそうに、腕を回す。
「あ、また当たった。」
「あー、腕の骨がー。」
「てめェらは、当たり屋かっ!?」
総悟が、十四郎にロケットパンチを繰り出す。
「アホか!
これは、ロボットダンスじゃねえっ!!」
「これが、俺なりのラジオ体操でさァ。」
「テメッ!」
十四郎は、総悟に蹴を入れる。
「土方さん、危ねェや。」
「俺なりのラジオ体操なんだから、仕方ねェだろ。」
「ラジオ体操は、足を上げる動作なんて、一つも無かったと思うんです……がっ!」
十四郎と総悟の乱闘が始まる。
「って……二人とも、痛ぇじゃんっ!」
「おっ!
喧嘩か、喧嘩か?」
「お前ら、止めろっ……うわっ!」
乱闘は次第に広がり、3Z以外のクラスまで混じり始める。
『なぁ、ふと思ったんじゃが……。』
『何だよ。』
『何かあった?』
『薄桜で体育祭やることが、間違ってるんじゃないか?
こいつら、こうやって野放しにしたら、乱闘だの何だのになるのは、目に見えてるのに。
だから、あの校長はバカなんじゃ。』
『…………まあ、確かにな。』
蘭が乱闘の中心を見て、叫ぶ。
『千景、何やってんだっ!
お前が先頭に立って暴れて、どうすんだよ!!
ってか、会長だろ!?
この乱闘、鎮めろよ。』
今年の体育祭は、砂埃と汗と涙を撒き散らす、壮絶な戦いになりそうだ。