薄桜学園3年Z組

□結構、お弁当一つでお腹いっぱいです
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昼休み。
それは、何よりも厳しい戦の時間である。


「隣の晩ご飯、いっきまーす!!」


「いや。
晩ご飯じゃねーだろ、新八っつあん。」


「私のタコさんウインナー、早く返すネ!」


「残念ダッタナ。
モウ、タコサンウインナーハ、私ノ胃袋ノ中ダ。」


世の中は弱肉強食と言うが、このクラスは無法地帯がふさわしい。
そして、その中には四人の少女も入っていた。


「椿。
僕、手作りの愛妻弁当が欲しいんだけど。」


『帰れ。』


『椿様。
卵焼きを一つ、分け与えて欲しいのですが。』


『帰れ。』


『椿様。
コロッケ!コロッケが欲しいです!!』


『お前はプールに沈んできなさい。』


椿の机の周りには、ひれ伏す愚民共……じゃない。
ひれ伏す生徒達がいた。


「蘭。
俺の弁当なら、分け与えてやらんこともないが。
そうだな……今度、【でーと】なんて……。」


『千景!
貴様は何も分かっていない。』


『そうだ、そうだ!
この弁当は、【手作り】だぞ。
お前の一流シェフの美味しいご飯なんて、ちっとも及ばないんだぞ!!』


「なら、貴様にはやらん。
蘭は、いつでも食べて構わんぞ。」


『すいませんでした。
マジで食べたいです。
【手作り】も素敵だけど、三ツ星弁当も捨てがたいですっ!!』


そんな中、安全な一角もある。


『左之助さん。
良かったら、食べてくれないか。』


「ああ。
いつもありがとうな。」


『私に出来るのは、これくらいじゃから。』


と、ほのぼのしていたり。


「斎藤さん。
良かったら、これ……。」


「すまない。
いつも、迷惑をかける。」


「そんなことないですっ!
斎藤さんが美味しいって、言って下さる顔が好きだから……。」


「あんまり、恥ずかしいことを言うな。」


など、むず痒くなるものも多い。
何だかんだ言って、これも団結力の強い証拠だろう。

――――――――――――


そんな教室に、二人の男が近づいていた。


「歳三。
何で、俺まで行かなきゃなんねーの?」


「ったく。
ウチのクラスが騒がしすぎて。
【昼休みに何やってんだって】
って、隣のクラスからの怒鳴り込みが、30回を越えたからだろうが。」


「ないわー。」


「原因を突き止めろ、って言ったところで、ほとんど分かりきってんだけどな。」


二人が教室に足を踏み込むと、中は凄い惨状であった。


『てめーら、私はコロッケが食べたいんだー!』


『俺は卵焼き!!』


机が端に寄せられた教室の真ん中で、蓮と蘭が、箒を振り回す。


「お前ら、何してんだ。」


『コロッケ!』


『卵焼き!』


「そんなもん、購買のコロッケパンとオムレツパンでいいだろうが。」


「あれだけで、何を訴えてんのか、分かったんだ。
やっぱ、歳三は凄ーや。」

銀時が率直な感想を漏らす。


『コロッケパンもオムレツパンも、売り切れてたんだよ!』


『でもさ。
一度、思いついちゃったら、他のモノ、食べたくないじゃん!』


『俺らの舌は、完全にコロッケ使用と、卵使用に切り替わってんだよ。』


二人は椿を、箒で示す。


『『だから、弁当分けてくれ!!』』


『却下。』


二人は、また暴れだした。
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