薄桜学園3年Z組
□苦難を乗り越え、今後は遠足……って、京都なの!?
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―14:00 西本願寺―
『『ほーんがーんじー!』』
「だから、恥ずかしいから止めろ。」
「恥ずかしいとか、そんなレベルじゃねえよ。
周りの白い目を見ろ。
空気を読め!」
しかし、蓮と蘭は写メるのに必死である。
「やはり、ここは観光客も多いな。」
『屯所があったって事以外、ただの寺って感じですけどね。』
「でも、大きいよ。」
『それは……それです。』
蓮は親指を立てる。
『皆の者、撤退だ。
写真はちゃっかり撮っておいた。』
『回れー右っと……んん?』
蘭が何かを発見し、目を凝らす。
『あ…あれは…。』
『何よ、はっきりしなさい。』
『沖田が土方に、大量の煙を送ってる。
しかも、うちわで。』
『用意周到じゃな〜。』
煙がモクモクしてる所で、騒ぐ真選組組。
「あれよりは、マシだな。」
「30oもねえがな。」
一行は、絡まれる前に撤退した。
――――――――――――
―15:00 二条城前―
途中、不動尊の屯所跡を見て、寂しく思いながらも、一行は二条へ向かう。
JRで電車に乗る際も、約二名の所為で、反対方向に乗りかけたことは、言うまでもない。
『さーって、にじょ〜じょ〜!』
『鬼三人のスチルが印象的ですわね。』
『さて、あの屋根を探しに行こうじゃないか。』
『『Let's!あの屋根を探せ!!
再現するにも人数がいなかったや……テヘッ。
大作戦!!』』
『探さなくてもいいわよ。』
『めんどくさいだけじゃ。』
椿と向日葵に先頭を取られた二人は、呟く。
『『そっち、反対。』』
『『…………。』』
顔を真っ赤にした二人に、Wバカは爆笑する。
『千鶴、今の見た?』
『今のはヤバイ……マジでヤバイ。
あれだけ、格好つけた後で、あれは……っで!』
椿の手にはハリセン。
向日葵の目には殺気が宿っている。
『『すいませんでした。』』
『『それでよろしい。』』
蓮と蘭は、高い堀を見上げる。
『長いなー。』
『遠いなー。』
『先は、ギリギリ見えるけどなー。』
『二条城の話で、鬼組が堀を飛び越えた気持ちも、分かるなー。』
『でも、今の【普通の女子高生】な私達じゃ、絶対に無理だよー。
あそこにボチャンだよー。』
すると、前方から笑いを含んだ、助けを求める大きな声が……。
「左之〜、土方さ〜ん!
助けてくれ〜!!」
「し、新八!?
どうしたんだ?」
「平助が犬に襲わ……ぷっ。」
確かに、50メートルほど先に、犬に襲われている平助の姿がある。
「やっぱり、平助君は犬に懐かれやすいんですね。」
「千鶴。
あれは、笑い事ではないぞ。」
苦笑する左之助を横に、向日葵が平助の乗っかる犬と睨み合う。
「……向日葵?」
『お手。』
犬は素直にお手をする。
『お座り。』
「わっ……。」
『藤堂さん、今のうちです。』
「サンキュー、向日葵!」
犬の飼い主がやってきて、向日葵と平助に頭を下げる。
『なんか、新たな発見ね。』
『びっくりだぜ、マジで。』
『私もやってこようかな?』
「噛まれて終わるから、止めときやがれ。」
蘭は新八に訊く。
『二人共、二条城に行ったところか?』
「まーな。」
『じゃあ、道は合ってんのか。』
すると、新八は苦笑する。
「堀沿いに、めちゃくちゃ歩かなきゃいけねーから、大変だぜ。
まっ、俺の鍛えに鍛え上げた筋肉な……。」
『どうする?
まだまだ、先だってよ。』
『めんどくさいに一票!』
『ダルいに一票じゃ。』
「……もう、どうでもいいです。」
『時間的に、間に合わないに一票。』
『よーし、皆の衆。
撤退じゃー!!』
「お前ら、そんなんでいいのかよ。」
一行は、途中で意気揚々と引き返していった。