薄桜学園3年Z組

□期待を裏切るようでは、武士としては一人前でも、彼氏としてはまだまだじゃな
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映画館は休日にしては、空いていた。
そのおかげが、女子組のテンションも高い。


『千鶴、そこから顔出して!
そうそう、可愛いよ〜。』


「そんなことないですよ!」


『蓮、写メったら俺と一トコに送っといてあげて。』


『りょーかい!』


と、顔出し看板の前にいたり。


『パンフレットに800円はないわ。』


『この銃のレプリカも、値段のわりに完成度が低いぜよ。』


『ポストカードに500円も高すぎるわ。』


と、グッズ売場で営業妨害もどきをしている。


そんな中、男子組は……。


「ポップコーンのM3つとS2つ頂戴。
あ、キャラメルでお願いね。

あと……飲み物が。」


「コーラ3つ。
メロンソーダと紅茶2つづつ。
コーヒーとウーロン茶とトロピカルミックス黒酢ジュースを1つづつだ。」


「風間、ちゃんとメモとってたんだ。
見た目に反して、几帳面だね。」


「ふん。」


というように、買い出しに行かされていた。


「左之さーん、一くーん。
荷物運びよろしく。」


「はいよ。」


「了解した。」


すると、総司は隣のレジで歳三が注文しているのを発見する。


「チョコっとイチゴパフェ、頼む。」


「あれ?
土方さんが甘いものですか?
天変地異でも起きるんじゃ……。」


「違ぇよ、アレのだ。」


歳三は蓮を指差す。


「これで機嫌が直るなら、安いもんだろ。」


歳三はパフェ片手に去っていく。


「すまない、クリームブリュレ1つ追加してくれ。」


「フルーツ杏仁も頼むわ。」

「抹茶ホワイトだ。」


「激辛ホットドッグもお願い。」


四人も荷物を持って、歩きだす。


「なあ。何か、あいつら可哀想じゃね。」


「デートって、こんなんじゃったっけ?」


「これでは、ただ友達と遊びに来たようにしか見えんな。」


「……まだ分からねェぜ。
所詮、あの野郎共も男だ。」


陰からこっそり見つめる兄'S。
少なからず、同情が見えるのは、気のせいだと思いたい。


「あ、中入った。」


「俺らも行くぜィ。」


四人も中へと入っていく。
そして、女子と男子でぱっくり割れた席順を見て、改めて同情するのだった。


――――――――――――


映画館を出てきた男子組の顔に、生気は無かった。
映画の間中も振り回され、今はフードコートでおごっているところなのだ。
生気だけでも、残っているだけ、マシである。


『うぅー、サリー!』


『くそっ、何でサリーが死んだんだよ〜!
私、仇討ちに行ってくる。』


「いい加減にしろ……。」

歳三は、蓮を席に座らせる。


『総司さん、もうヤケ食いです。
レッドでホットなチキンを買ってきます。』


「そっか……。」


総司は財布を見て、ため息を吐く。


「バイトでも、しようかな……。」


「薄桜はバイト禁止だろうが。
それに、部活はどうすんだ。」


「もともと幽霊部員なんだから、変わりませんよ。」


すると、少し離れた席から声がする。


「土方さん!総司……ってか、皆いんじゃん。」


「何だよ、何だよ。
俺達に黙って、皆で遊びに来てたのか!?」


新八の【遊びに来た】発言に、男子組は沈む。


「どうかしたのか?」


『気にしなくていいんじゃ。』


平助がポテトを咥えながら言う。


「そういえば、さっきは坂田先生達に会ったなぁ〜。」


『『『『えっ……?』』』』


「でも、何か意気消沈してたっていうか……。
げっそりしてたな。」


「すげー、どんよりしながら帰って行ってた。」


四人は疑問を浮かべるも、帰ったなら別にいいかと笑う。


『よ〜し、プリクラ撮りに行こうぜ!』


『千鶴殿、行きますよ。』


「さっ、斎藤さんっ。
お先に行ってます!」


走っていく五人の背中を見て、ポツリと呟く。


「「「「帰りたいのは、こっちだ。」」」」


兄でも手の負えない妹達と、果たして自分達はこれから先も一緒にいられるのだろうか。
四人は遠い目で、窓の外の空を眺めた。
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