薄桜学園3年Z組

□期待を裏切るようでは、武士としては一人前でも、彼氏としてはまだまだじゃな
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駅の前の広場に五人の男が立つ。
目には隈を、片手にはチケットを携えて、オーラを放つ姿は恐ろしいことこの上ない。


「来ないな。」


「まだ30分前だからな、土方さん。」


「まだ30分前なのか?
どれだけ待たされれば、あいつらは来る。」


「風間はいいじゃん、一時間前からなんだから。
僕なんか、二時間も待ってるよ。」


五人は、暖かくもなく寒くもない、微妙な風に吹かれている。


「俺、普通にショッピングモールでデートして、問題にならないのか?」


「どうせ、土方さんと蓮ちゃんが付き合ってるのは、周知の事実なんだし。
別にいいんじゃないですか?」


「そうは言っても、スリリングな関係に燃える読者もいるんじゃねえか?」


「この小説に、そんなシリアスはいらないですよ。」


「まあ、所詮は夢小説だからな。
フィクション、フィクション。」


「勝手に問題提議して、勝手に有耶無耶にする。
そんな事でいいのだろうか。
この小説……。」


「斎藤、突っ込むんじゃねえ……。」


すると、一人目が駅から出てくる。


「お待たせしました。」


可愛らしくポニーテールを振りながら走ってくるのは、雪村千鶴である。


「すみません、遅くなってしまって……。」


「まだ15分前だ。
千鶴は悪くない。」


すると、その少し後ろから歩いてくる影がある。
千鶴より長いウェーブしたポニーテールは、坂本向日葵の物である。


『…………おはようございます?』


「おはよう、向日葵。
待ってたぜ。」


『それは、おんしらが早く来るのが悪い。』


向日葵は疑問の表情を浮かべながら、千鶴を呼び寄せる。


『千鶴、どうなっとるんじゃ?』


「どうなってるも何も……。」


その時、ピンヒールの靴音がする。
長い紫がかった黒髪を揺らすのは、高杉椿である。


『……早かったんですね。』


「待ちくたびれたよ〜。」


『それは、早く来る人が悪いです。
待つより待たされる人間になることが、うちの家訓ですから。』


そして、周りを見て眉をしかめる。


『これは、どういうことですか?』


その言葉に、向日葵もグングン首を振る。


「何が?」


『だから、何でこんな人数が?』


「こんなって、10人だけだろ?」


『……意味がわからない。』


すると、駅から二人組が全力疾走で迫ってくる。
白髪と黒髪の天パとストレートは、綺麗なコントラストで走ってきた。


『『お待たせ!……って、えええええ!!?』』


「何だ?貴様ら、さっきから。」


『えっ……あれ?』


『今から、俺ら何するんだっけ?』


「何って……Wデートもどき。」


『『『『聞いてねえ〜!!』』』』


「「「「あ、忘れてた……。」」」」


Wデートもどきが波乱の幕開けな中。
駅の角から覗く、四つの影が……。


「デート!?
俺、聞いてないんだけど〜。」


「銀時、うるさいぞ。」


「あいつ、三日も俺を無視しやがって……。」


「むむっ、向日葵達が行ってしまうぞっ!」


やはり、しつこい兄'Sは懲りていないらしい。
さて、このWデートもどきは、小姑の兄'Sに邪魔されず、無事に終われるのだろうか!?
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