薄桜学園3年Z組

□縁切るぞ、この赤毛。浮気なんて、百年早いんじゃ
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『ちっ、仕留めそこなったか……。』


【坂本向日葵】
薄桜学園高等部3年Z組在籍
剣道部マネージャー
そして、原田左之助の彼女である。


「げほっ…がはっ……向日葵?」


『……………。』


無言の睨みが彼を襲う。


向日葵は基本可愛らしく、大人しいキャラであるはずだ。
しかし、左之助の目の前にいるのは黒いオーラを発する自分の彼女。


「向日葵……?」


『………………。』


「まさか、まだ怒ってんのか?」


『………………。』


「だから、誤解だって…………。」


『沈め。』


向日葵はプールの方を指差して言う。


「………………。」


今度は左之助の言葉が出なくなる。


『テストの件は分かった。
だから……。』


向日葵の声は涙声になっている。
左之助は、向日葵の背中を抱きしめ、いつものように慰めの言葉をかけようとしたが。


パシンッ!


乾いた音が教室に響く。


「……向日葵?」


『左之助さんなんか……左之助さんのバカぁ!!』


向日葵の涙は止まることなく流れる。
しかし、左之助は初めてのことに、若干パニックである。


『左之助さんは優しすぎるんじゃっ!
だから、余計にムカつく』


向日葵は左之助の胸をポカポカ叩く。


「どういう意味だ?」


『私にしてくれること、全部他の女の子にもしてるんじゃないかって、不安になるんじゃ。
私なんか、左之助さんに釣り合わないんじゃないかって!
テストの件も……だから……』


左之助は向日葵を抱きしめて、優しく言う。


「すまねえな。
向日葵に、そんな風に思われてるとは思わなかったからよ。
これからは気をつける。」


左之助は向日葵の頭を優しく撫でる。


「でも、俺がこんな風にしたいと思うのも、こんな気持ちになるのも、お前だけだ。
それだけは、分かっててくれ。」


左之助はそう言って、手を離す。
すると、左之助のポケットの裾からはみ出した、何かを向日葵が掴む。


『これ……?』


引っ張ると、中身は映画のチケットだった。


「その……一緒に行かないか?」


向日葵は顔を赤くする。


『行っても、いいのか?』


「行ってもいいって……お前とだから行きたいんだよ。」


すると、ますます赤くなる向日葵。


『行くっ!
私も行きたいと思ってたんじゃっ!』


「やっと、調子が戻ってきたな。
それじゃあ、部活にでも……。」


二人が教室の扉を開くと、そこには聞き耳を立てていたらしい辰馬がいた。


「お兄さん?」


「お兄さんじゃないぜよ。」


『兄さん、何でここに……?』


辰馬は向日葵の腕を掴む。


「向日葵、そんな奴と行くんじゃないぜよ。
いかがわしい目的が見え見えじゃっ!」


『そんなわけないじゃろっ!
このモジャ男!』


「それでも、あわよくばと思ったはずじゃ!
思ってなければ、男じゃないっ!!」


その時、口論していた向日葵を左之助が抱き抱える。


『ひゃっ。』


「向日葵、逃げるぞ。
それじゃあな、お兄さん。」


そう言って、二人は笑顔で教室を離れていった。


浮気されたら、大人しい子もブチキレるのが当たり前じゃ
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