シリーズ

□そんな君に鉄拳
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私、神前真鑼の家に、沖田さんが住み始めて一週間。
もう、私はヘトヘトです。


『沖田さん…。』


「真鑼ちゃん。
これじゃ、オムレツパンって買えないの?」


『だーかーらー。
それは、逆に多いんです。
いい加減、紙幣の使い方を覚えてください。』


「あはは。」


沖田さんは、慣れたのかどうかは微妙だけど。
何とか、馴染んできてる気がする。


『ってか、沖田さん。』


「何?」


『どうして、並んで歩くんですか。』


「だって、真鑼ちゃんしか、頼りにならないもん。」


『はぁ。』


この人が、昔の偉人だとは思えない。
まあ。偉人の全員が全員、性格に問題が無かったのかどうか、私の知るところではないが…。

その時、ふと思った。
沖田さんは、前の世界と同じように笑えてるのかと。


『沖田さん。』


「何?」


『楽しいですか?』


「真鑼ちゃんがいるから、楽しいかな。」


沖田さんはニコニコ笑うけど、それじゃ本当に楽しいのか分からない。
私は、この人のことを知らなさすぎる。

その笑顔の裏には、きっと元の時代の人達が心配とか、帰りたいって気持ちが詰まってるんだろう。


『何か、してあげたいな。』


「何か言った?」


『いいえ。』


この時代に来た時に、オマケでついてきた転入。
よく出来た話だとは思ったが、沖田さんは喜んでた。
しかし、沖田さんが入った瞬間、ファンクラブが出来て、追い回されたり。
女子の嫌がらせは日常茶飯…。


『よく考えたら、私のほうが迷惑かけられてるじゃん。』


沖田さんは椅子を引っ張ってきてる。


『何で、一緒に食べるんですか?』


「僕が真鑼ちゃんと食べたいから。」


『あのですね…。
沖田さんと私に変な噂が立つから、止めてください。』


「立つんじゃなくて、立ってるの間違いだよ。」


知ってるなら、離れてくれ。
真鑼は、その言葉を胸の内に閉まった。






「南蛮語は難しいよね。
よく、あんなペラペラ喋れるや。」


『南蛮語じゃなくて、英語です。』


そうは言うが、沖田さんは賢い。
一週間で、中一の内容は覚えた。

ちなみに、古典は完璧すぎる。
流石、江戸時代の人…。


『あっ!』


「真鑼ちゃん?」


『古典の予習って、明日提出じゃん。
ロッカーにノート、置いてきちゃった!

私、ちょっと戻ってるんで、先に帰っててください!!』


私は全速力で学校を目指した。
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