シリーズ

□そんな君に即答
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それは、ある日いきなり現れた。


『ん…。』


私、神前真鑼は普通の女子高生である。
そう、ごく健全な。
しかも、彼氏いない暦の17年だ。

今日は土曜な上に、両親は仕事で弟は部活なので、ゆっくりお昼まで睡眠中である。


『ふぁ〜、そろそろ起き……え。』


狭いベッドが、いつもの二倍狭い。

慌てて振り向くと、胸元のはだけた着物の、超イケメンのお兄さんがいらっしゃった。


『えっええ〜!?』


昼一番から、私の声がこだまする。

ちなみに、もう一度言うが、私は彼氏いない暦17年だ。
男を引っ掛けて楽しむ趣味なんて、これっぽっちもないし、引っ掛けれる顔でもない。


『だ…誰だ、この人。
昨日は、ゆきとメールして寝たよな。
酒なんか、飲んだ記憶ないよな。』


「……ん、千鶴ちゃん?」


私が騒いでいたからか、お兄さんが目を覚ました。


「あれ?君、誰?」


『えっと…それは、こっちの台詞なんですけど…。』


それが、彼との出会いだった。






『じゃあ、あなたは昼寝してて、気がついたらここにいた…。』


「そーそー。
やだな。早く帰らないと土方さんに、どやされそう。」


すると、お兄さんは部屋のテレビを指差す。


「ねぇ、あれ何?」


『何って、テレビに決まってるじゃないですか。』


「てれびって?」


『はぁ?』


私はお兄さんに疑問を抱く。
でも、お兄さんは真剣に分からないなしい。


「ねぇ、こっちは?」


こたつを指差し、笑うお兄さん。
こうなると、どっちが年上か分からなくなる。


『あの…?』


「そうだ、はやく屯所に戻らなきゃ。
とりあえず、ここどこ?」


『どこって…東京ですけど。』


「東京?」


私とお兄さんの話が噛み合わなくなる。


『あの…その着物って…。
役者さんとかじゃないんですか?』


「え、僕が?
そんなわけないじゃない。
だって、僕は新選組の人間だよ?」


『新選組…?』


どこかで聞いた名前に、頭を巡らせる。

そういえば、歴史の教科書の脚注に、そんな名前が…。
私は歴史の教科書を開く。


『これだ、新選組…って、幕末じゃん!!』


「何、それ?
あっ、近藤さんと土方さんの名前だ。」


『あの、名前聞いてもいいですか?』


「僕の?
…一番組組長、沖田総司だよ。」


カバンからケータイを取り出し、検索する。


『えっと…驚かないで聞いてください。』


「何?」


『ここは、あなたのいた時代の、百年ぐらい先の世界だと思います。』


「………え?」


『今は平成…あなたのいた時代は江戸……。

沖田さんでしたっけ?
あなたは、たぶんタイムスリップしたんだと思います。』


「たいむすりっぷ?」


『だから、あなたは未来に来ちゃったんです!』


沖田は少し思案顔になると、いたずらっぽい表情に戻る。


「どおりで知らないものがあると思った。
これで、つじつまがあったね。」


沖田さんの笑顔に、何の言葉も返せなかった。
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