四輪花(銀魂→薄桜鬼トリップ夢)

□Your standard
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土方の姿が、赤い紅葉に消えていく。
それが嫌で、言葉を紡いだ。


《歳三は綺麗だね。
やっぱり、桜の方が絶対に良いよ。》


どこまでが言葉になったのか。
どこまでが土方に伝わったのか。
知りたいけど、知りたくない。

そして、伝えられなかった言葉を胸に、意識が完全に沈んだ。


――――――――――――


蓮が目を覚ますと、見慣れない天井だった。


『………どこだ?』


「お前の部屋だよ、バカヤロー。」


『……………。』


声の主は、部屋の入り口に凭れかけていた。


『銀兄ぃ?』


「良かったぜ。
記憶まで無くされてたら、兄ちゃんは……。」


『そっか、帰ってきちゃったんだ。』


蓮はもう一度、天井に目を向ける。


「新八と神楽も心配してたぜ。
お前が起きないってな。」


『私、何日寝てた?』


「五日。」


『めっちゃ爆睡じゃんね。』


起き上がろうとすると、腹に痛みが走る。


「無理に起きんなって。
言っとくけど、腹に風穴空いてんだぞ。」


『え……?』


「爆発に巻き込まれただけかと思ったら、刀で腹まで刺されてるとは……。
神楽はわんわん泣くわ、新八も真っ青だわ。
もう俺、どうしたもんかと思って……。」


銀時は蓮の顔を覗き込む。


「お前、ちょっと……。」


『何?』


「何もねぇって。

それより、飯いるか?」


蓮が頷くと、銀時は部屋を出ていった。


『この部屋、この景色が懐かしく感じるなんて……。
なんか、不思議だな。』


蓮は寝間着から、懐かしい普段着に着替える。


『ごめん、銀兄ぃ。
私、やっぱり確認しに行くよ。

なんか、夢で終わらせたい自分と、現実であってほしいと思う自分。
せめて、区切りをつけたいんだ。』


蓮は窓を伝って、部屋を去る。
銀時は部屋の襖の前で、寂しげな表情をしていた。


――――――――――――


とある長屋の一室。
そこには椿、蘭、向日葵がいた。


『やっぱり、ここにいたか。』


蓮が扉を開けて中を見渡し、扉を後ろ手に閉める。


『蓮が私を殴り飛ばさないってことは、あの記憶はちゃんとあるってことね。』


『やっぱり、夢じゃなかったんじゃな。』


蓮が座布団の上に座ると、椿が茶を目の前に置く。


『ってことは、全員同じ夢を見てた……ってことだね。』


『夢……?』


『夢だよ。
長くて、夢とは思えないくらい幸せな夢。』


蘭が蓮の胸ぐらを掴む。


『どういう意味だ、そりゃ。』


『そういうことだって。
そうした方が、向こうも私たちも幸せ……。』


「黙れよっ!!
千景も土方も、総司も左之も新選組も皆……。
全部が夢と思い込んで、それでてめぇはいいのかよ!!」


『割り切りな。
じゃねえと、やってらんない。』


蘭の平手が、蓮の頬を叩く。


『そうやって逃げて、お前らしくねぇよ!!
いつでも何とかすんのがてめぇだろぅが!!』


蘭の目尻に涙が浮かぶ。


『俺は千景が好きだ。
好きで好きで、たまらない。
大好きな人に二度と触れられないのが、辛くてたまんねぇ!!』


『それは、蘭が風間と恋仲になったからだろ?』


『…………何が言いたい。』


『三人ともおかしいんだよ。
いつ別れるかもしれないのに、二つ返事で付き合って……。
迷惑なこと、この上ねぇな。』


蓮は鼻で笑って、長屋の扉に手をかける。


『蓮。』


椿の声に振り向くと、そこには凛と胸を張る三人がいた。


『私たちはあの人達と出会ったことも、恋をしたことも、全然後悔してないわ。』


『…………。』


蓮は無言で長屋を出る。
そして、流れてくる涙を必死に拭った。


『別に、あいつら心配いらないじゃんかよ。
何か、すっごい損した気分っ……。

胸張ってあんな台詞言われたら、後悔だらけになっちゃうってんだ。』


見上げた空は、少し前に見た空と違い、大きな船が飛んでいた。
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