四輪花(銀魂→薄桜鬼トリップ夢)

□Obtain the world
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暗い空気のまま朝を迎え、昼も隊士達の稽古に精が出ない。

そんな中、ずっと蓮が一人、道場で竹刀を振り続けていた。


「蓮さん、ずっとあの調子なんです。」


「あいつなりに、不安なんだろうな。」


「私から、何かしてあげれることは、無いんでしょうか?」


「そうだな…。」


入り口に立ち、悩む二人の背中に、声がかかる。


『蓮が一人で負けて、椿が怪我したんだから。
別に、千鶴ちゃんや斎藤さんが気にすること、ないですよ。』


「向日葵…。」


『いつも、自分の力を過信しすぎなのよ。
皆より、ちょっと強いからって、調子に乗って…。
一回くらい、痛い目見たほうが良いんだから!!』


「違うと思います。」


千鶴は、向日葵の目を真っ直ぐ見て言う。


「おかしいです。
蓮は向日葵さんや皆のために、頑張って命を懸けてまで戦ってるのに。
いつも、怪我して死にそうになっても、辛くて苦しい時でも、笑顔で頑張ってるのに!

蓮が悪いわけじゃないし、元はと言えば私が…。」


『なんで皆、蓮の肩を持つのよっ!!
強いから、信頼出来るからっ!?
私だって!!』


『千鶴も向日葵も、悪くないよ。
全部、私のせい。』


「蓮!?」


道場から出てきた蓮に、三人は驚く。


『私は心配いらないよ。
それより、眠りっぱなしの椿と、看病しっぱなしの沖田だ。
……飯か何か、持っていってやってよ。』


「でもっ…。」


『他の隊士達に、ずっと道場使っててごめん。
もう、稽古してくれていいからって、伝えといてね。』


蓮は立ち去っていく。


「蓮、今日は何も口に含んでないのに…。」


向日葵も黙って去っていく。


「千鶴、気にするな。
蓮も向日葵も、不安なだけだ。
椿が目覚めれば、いつも通りに戻るだろう。」


「そうですよね。」



すると、蘭と左之助が走ってくる。


『千鶴っ!』


「お二人とも、どうしたんですか?」


「千鶴、斎藤。
お前ら、向日葵を知らねえか?」


「向日葵なら、さっき廊下を通っていったが…。」


『何か、言われたりしなかったか?』


「俺達は心配ない。
それより、蓮に言っていたな。」


蘭は苦虫を噛んだような表情になる。


『だから、蓮と向日葵を合わせたく無かったのにっ!!』


「仕方ねえよ。
とりあえず、向日葵を捕まえねえとな。」


『二人とも、悪かった!
この借りは、いつか返すっ!!』


二人はバタバタと去っていく。


「私、どうしたらいいんでしょうか。
皆、それぞれ悩んだりしてるのに…。
私だけ、のうのうとしていて。」


「別に、案ずる事は無いだろう。
あんたが思っているほど、あいつらは弱くない。
今は、信じる他に無い。」


「そうですね。」






その頃、沖田は寝ている椿の枕元に座っていた。


「椿は無茶しすぎだよ。
勝手に仕事を任せた土方さんもだけど…。
椿は僕の組の隊士なんだから…。」


眠る椿に、沖田は自分の胸の内を語る。


「僕がいない所で、勝手に死なないでよ。」


すると、急に椿が苦し気な声をもらす。


「椿!!」


『…………さ…。』


沖田の伸ばした手が、ふと止まる。

以前から、椿は寝ていると、うなされることがあった。
その時、椿が呼ぶのは、兄の名前だった。


「…………ごめん。」


傷ついた時、隣にいるのが大切な兄じゃないことに、沖田は無意識に謝罪を漏らす。

しかし、その声を遮るように、椿が沖田の手を握った。


『……じさ…ん……そ…じさん。』


「椿…。」


沖田は少し驚いた表情をしたが、ふと優しい笑みを浮かべた。
汗で張りついた髪をはがすと、椿の表情が和らいだのが分かる。


「次は、絶対に守るから。」

沖田は一人、寝ている椿に誓った。
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