四輪花(銀魂→薄桜鬼トリップ夢)

□Gravity without power
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朝の一件以来、屯所の空気がおかしかった。

いつもベッタリの左之助と向日葵の距離が、完全に離れている。
そのうえ、絶えなかった笑い声が、沈黙とかしている。

まあ、蘭は知っているため、我関せずを貫く予定らしい。


「あれ?左之と向日葵、どーしたんだ?」


「蘭、知らねー?」


『あらかた、左之がバカ発言でも、したんじゃねーの。』


とりあえず、嘘は言っていない。


「そっかぁ〜。」


こいつら二人が、自分以上のバカで良かったと、改めて蘭は思った。


次に沖田。

いつもなら、土方に何か素晴らしい嫌味を発するはずだ。
しかし、今日は口に飯を運ぶだけだ。

椿も、あまり良い表情ってわけではない。


そして、上座にいる土方と蓮。

土方の皺は、いつもと違う皺だ。
怒ったものではなく、悩んでいるもの。

蓮は、蘭と同じくバカなので、一の所まで行って、おかずを拝借している。
初めて、蘭がマシな人間に見えた日だった。


「今日は皆、静かだなぁ。」


近藤さんは朗らかに笑うが、笑い話ではないことは確かだろう。
大体、朝一から羅刹だの何だの、新選組の裏を聞いてしまったのだ。
盛り上がって食べたい気分ではない。


『千鶴、何で食わねーの?
もらっていい?』


今日は立場が逆転している蓮が、千鶴に問う。


「は…はい…。」


しかし、千鶴の表情は明るくなる兆しがない。


『(しゃーねーな。)』


蘭は、笑顔で蓮と千鶴の間に入る。


『千鶴、相手にしなくていいぜ。
蓮も、食い過ぎて太るぞ。』


太ると聞いて、蓮は石化する。


『まぁ〜じかぁ。
やっべ、やっぱ大丈夫だわ。』


次に、蘭は千鶴と向日葵の肩を掴み、高らかに宣言する。


『今日は、女子が一番風呂をいただくぜっ!
てめーら、男共は最後な!』


「ってか、なんで男の蘭が行くんだよ!」


蘭は平助の言葉で、自分が男装していたのを思い出した。


「あは…ははは…。
そうだな…っそうでござんすなぁ。
じゃあ、俺が一番最後風呂で。」


向日葵が顔をしかめるが、蘭が気にするなと促す。
千鶴は小首を傾げていた。





『はぁ〜、いい湯だった。』


蘭は呑気に廊下を歩く。
皆、そろそろ床に就く時間だ。


『やべっ、小腹空いてきた…。
なんか残ってねーかなぁ。
ってか、残ってるわけねーか。』


蘭が廊下を曲がった瞬間、爆音が聞こえる。


『なっ!』


蘭は音の方に走りだす。


『あっちには、皆の部屋が…。』


すると、いきなり障子が開く。
中から飛び出してきたのは、一だった。


『斎藤!?』


「千鶴が危険だ。」


『どういうことだ?』


「襲撃してきたのは、例の鬼だ。」


一によると、先ほどの爆音は鬼達が侵入した時のものらしい。


「侵入した人数は定かではないが、千鶴を狙っているのは確実だ。」


『んじゃ、俺らが千鶴についてれば、確実ってこったな。』


「ああ。」


二人はスピードを落とすことなく、千鶴の部屋まで駆け抜けた。


『千鶴!?』


「蘭さん!」


千鶴の無事を確認した二人は、安堵の息をつく。


「この騒ぎは…。」


「侵入者だ。」


「まさか、風間さん達ですか!?」


一は首を縦に振る。


『とりあえず、お客さんみたいだぜ。』


蘭の言葉に、一と千鶴が外を見ると、そこには金髪に赤眼の男がいた。


『さっそく、鬼さんとかよ。』


「女鬼をもらいに来た。」
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