空色スパイラル3

□ハードボイルド同心編
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ただいま、万事屋一行はイメクラの客引きの途中である。
しかも、狐の着ぐるみを着て。


「その辺に、いいカモいねーかな?」


『あれとか、どうっすか?
お金、持ってそうだし。』


愛が指差したのは、膝をつく、いかつい顔をした男だった。


「でかした、愛。

オイ、大丈夫か。
アンタ。」


「だいぶ、酔ってるみたいですね。」


「吐いた方がいいアルヨ。」


「どーすか?
ウチの店で、ちょっと休んでいかれたら。」


「カワイイ娘、いっぱいいるアルヨ。」


「ネズミならぬ、狐がようやく、尻尾を見せたか。
神妙に、お縄につけいキツネめが。
…なんていうプレイとかしたいんですけど。
いけますかね?」


「ああ、同心プレイ。
岡っ引きプレイもありますよ。」


「マジっすか。
基本、僕Mなんで、結構キツめにやってほしいんですけど。」


四人は、男を店に連れて行った。


【仕事のあとの一服…これがたまらない。
至福の時。
最早、これ一本のために仕事をしているといっていい。
男は、たかが一本のために命をかける。】


「何やりとげた顔してんだァァ!!
仕事中、イメクラ行ってただけだろーがァァ。
てめーは!!」


「何してんだ、お前!!
一本って何?そっちの一本か?
一本一万円コースか!?」


【男には、我慢できない一本がある。】


「最低な事を、ハードボイルド調で言うな!!」


四人は目の前で行われる、男と上司の漫才に呆れる。


「挙句、酔っぱらって、あんなもん連れてくる始末!!
狐面って言ったんだよ、俺ァ。
なんで着ぐるみ!?

どうしてお前は、いつもいつも…。
前から思っていたがな………お前は顔と仕事の能力のバランスがおかしい!!
その顔はなァ、どう考えても仕事できる奴の顔だろう!
なのに、どうして全然ダメなの。
どーしてバカなの!
なんで、無駄にハードボイルド!?」


【他人から見れば、無駄に見えるこだわり…。
しかし、そこに男の全てがある。】


「うるせーんだよ!
存在そのものが、無駄な奴が言うな!
オイ、葉巻やめろ。
それ!
なんで、上司から説教されてんのに、葉巻ふかしてんだよ!
ブッ飛ばすゾ!!

…平次。
てめーがあらぬ所で、ハードボイってる間に、また犠牲者が出たんだぜ。」


「まさか、また狐が…。」


「ああ、まただよ。
忍び入った店の者。
店主から丁稚にいたるまで、一人残らず皆殺し、血の海よ。

もう、狐の奴ぁただの凶賊になりさがっちまった。
平次、こいつぁ十年も奴を追っていながら、一度も捕まえられなかった、てめーの罪だ。
てめーが奴を捕まえてりゃ、死ぬ者もいなかった。
てめーが奴を捕まえてりゃ、狐もあそこまで墜ちることはなかった。

てめーは、立派な罪人だ。
無能というのも、罪目に加えたいもんだね。」
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