空色スパイラル3

□第百二十六訓 犬の肉球はこうばしい匂いがする
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定春の調子が悪い。


「んー。
また残してるアル。

銀ちゃん、定春このごろ食欲ないネ。
具合が悪いのかもしれないヨ。」


『病院に連れていった方がいいかも……。』


皿に残ったドッグフードを、愛と神楽は心配そうに見つめる。


「ドッグフード5袋もたいらげる奴を、具合が悪いとはいわねー。
頭が悪いっていうんだ。」


「いつもは、7袋ネ。」


「夏バテじゃねーの。
顔にまで、毛が生えてるからな。」


定春は雑誌を開いて、読み始める。


「そういえば最近、定春。
ファッション雑誌ばっかり呼んでるネ。
衣替えしたいのかもしれないヨ。」


「確かに暑そうだもんね。
思いきって、カットしちゃいましょうか?」


「じゃあ、私がやるネ。」


『私、ハサミ持ってくるっす!』


「定春ぅ〜。
いい男にしてあげるからネ。」


――――――――――――


数日後。


「んー。
また残してるアル。」


定春の頭と手足は、変に刈り上げられている。


「銀ちゃん。
やっぱり定春、食欲ないネ。
具合悪いんだヨ、きっと。」


「お前が、とんでもねーヘアースタイルに刈るからだろ。
落ちこんでんじゃねーの?」


「そんなことないヨ、カッコイイヨ〜。
定春、【クールビズ】ネ。」


『間違えて、パッツンにしちゃいました(笑)
みたいなカンジが、可愛いっすよ!』


「いや、パッツンどころか、ごっそりなってるからね。
てか、どこをどう見たら可愛くなんだよ。
そんなプロレスラーみてーな髪型した犬、見たことねーよ。」


定春は最近お気に入りの雑誌を、捲り始める。


「そういえば最近、定春。
マッチョ雑誌ばかり呼んでるネ。
夏にむけてプロレスラーみたいに、肉体改造したいのかもしれないヨ。」


「もう改造されたよーなもんだろ。
お前という狂科学者[マッドサイエンティスト]に。」


愛と神楽、新八の三人は、定春を見つめる。


「プロレスラーかァ……。」


「いや…やんなくていいって。」


「どうしたら、いいんだろ。」


「どーもしなくていいって。」


『私達で協力出来ることは、何でもしてあげよっ!
まずは、形からっすね!!』


「……もういいや。」


――――――――――――


数日後。


「んー。
また残してるアル。

銀ちゃん、やっぱりダメアル。」


「ダメなのは、お前らだろ。」


定春はプロレスラーのマスクをしている。


「なんで、犬が犬のマスク被ってんだよ。
チャーハンにチャーハンをかけて食べるような暴挙だよ、コレは!」


『チャーハンはチャーハンでも、五目チャーハンの上に海鮮チャーハンっす!』


「そうヨ!
それに、犬じゃないネ、【ウルフザマスク】ネ。
得意技は、毒霧ネ。」


「オイオイオイオイ、毒霧でてるぞォ!!
新八ィ、雑巾もってこい雑巾!」


新八が処理する中、定春は雑誌を読み始める。


「ウルフザマスク、どうしちゃったアルか?
元気出してヨォ。

ダメアル。
最近はホットドッグプレスに、ご執心ネ。
【この夏、あの娘をおとしちゃえよ】特集ネ。」


「……オイ、コイツ。
ひょっとして。」
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