空色スパイラル3

□第百二十五訓 かもしれない運転でいけ
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江戸にある、自動車学校。
そこに、銀時と愛の姿があった。


「すいませーん。
また、来ちゃいました〜。」


『私は初めてっす!』


「君が青野さんね。
よろしく。

それにしても、坂田さん。
アンタ、何度ここへ戻ってきたら、気がすむの。
何?今度は、何やったの?」


「すいません〜。
忍者をね〜、ちょいとはねちゃいまして〜エエ。
免許とり消しみたいな。」


「なんで、車より速く走れる忍者を、はねれるの?
隕石が、地球に落ちてくる位の確率だよ。」


「先生の教えの、たまものです。」


「教えてねーよ。
何、ちょっと先生のせいにしてんの。」


先生は銀時と愛に、真剣な表情で言う。


「だから言ったでしょ。
【だろう運転】はダメだって。
【多分大丈夫だろう】【誰もとび出してこないだろう】
こんな気構えじゃ、急な時、対応しきれないの。
【かもしれない運転】でいけって言ったでしょ。

【忍者が出てくるかもしれない】【あの忍者、もしかしたら右折してくるかもしれない】。
そういう気構えで運転してれば、なにが起きてもスグ対応できるでしょ?
青野さんも、ちゃんと覚えておいてね。」


『はーい。』


先生が車の扉を開く。


「ハイ、じゃ助手席乗って。
君に足りないのは、技術より注意力だから。
他の人の運転、隣で見て、注意力を養う。
青野さんは、後部座席から見ててね。

じゃあ、よろしくね。
今日は合同教習だから。」


「どうも、宇宙キャプテンカツーラです。
よろしくお願いします。」


銀時は顔を見た瞬間、カツーラを蹴り飛ばす。


「坂田さん〜。
かもしれない運転でいけって言ったでしょ?
【もしかしたら、合同教習の相手が宇宙キャプテンかもしれない】
そーいう気構えでいかないとダメ。」


「あっ、スイマセン。
ちょっと、ビックリしちゃったんで。」


『……小太郎だよね。』


「あんなヘタな変装するヤツ、他にいねーよ。」


銀時と愛は車に乗り込む。


「早く、カツーラさん。
車に乗って。
乗車する前に、ちゃんと周囲確認してね。」


カツーラは車の下を覗き込む。


「ハイ。
もしかしたら、車の下に忍者がはりついてるかもしれない。」


すると、銀時がアクセルを踏み、車がカツーラをひく。


「もしかしたら、確認作業中に、車が急発進するかもしれない。」


ボロボロのカツーラは、車の後ろを確認する。


「もしかしたら、車の後ろで、忍者がかくれんぼしてるかもしれない。」


すると、車がバックし、カツーラは再びひかれてしまう。


「もしかしたら、車がバックしてくるかもしれない。」


カツーラは銀時に向かって叫ぶ。


「いい加減にしろォォ、貴様!!
俺は真面目に免許をとりにきているんだぞォ!!」


「カツーラさんはね。
ビデオ屋の会員になりたくて、免許をとりにきたんだよ。」


「どこが真面目だァ!!
俺だってなァ、真面目に免許とり直しにきてんだよ!
お前なんかに付き合うのは、絶対いやだ!
先生、なんとかしてくれ!」


『どっちもどっちっすね……。』


カツーラが運転席に座り、車は出発する。


「もしかしたら、仲の悪い二人が、一緒に乗車することがあるかもしれない。

ね?
かもしれない運転だよ、二人とも。
あらゆる状況を想定して、臨機応変に安全で速やかな運転を心がけるんだ。」


『それにしても、小太郎は上手っすね。』


「小太郎じゃない、キャプテンカツーラだ。」


「あーいいよー、カツーラさん。
初めてにしては、実にいいハンドルさばきだ。
でも、ちょっとスピード出すぎだね。
カーブ前は減速して。」


カツーラは前のめりで運転する。


「お前、力入り過ぎなんだよ。
ハンドルに寄り過ぎ。
かえって、視界悪くなるぞ。
身体を離せ。」


「もしかして…俺は緊張しているのかもしれない。」

「どんな、かもしれない運転!?
つーか、かもしれなくねーんだよ。
完全に緊張してんだろーが!」


車は急カーブする。


『きゃあっ!』


「おいィィ!!
あぶねー、スピード落とせ!」


『死んじゃうっ!
事故って死ぬー!!』


「坂田サン、ブレーキを。
教習車には、助手席にもブレーキがあるから。」


カツーラは、銀時の右足を掴む。


「もしかしたら…。
スピードを50キロ以下に落とすと爆発する爆弾を、どこかのテロリストがしかけているかもしれない!」


「どんだけ手の込んだ、かもしれない運転!?
つーか、テロリストお前!!

オイぃぃ、先生!!
どうすんだ!?
だから、俺イヤだって言ったんだよ!
コイツ、クソ真面目だから、こういう事になんの!!」


S字カーブも無視して、車は走る。


「S字ぃッ!!
おかまいなしかァァ!!」


『小太郎〜、もう勘弁してぇ!!』


「もしかして、S字のSの部分に…。」
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