空色スパイラル3

□第百八訓 んまい棒は意外とお腹いっぱいになる
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愛は小銭を片手に、北斗心軒の前にいた。


『久しぶりっすね。』


戸を開けて中に入ると、桂と花野アナが座っていた。


『何で、小太郎と花野アナが……!?
すっ、スキャンダル!』


「ちっ、違います!
これは、ただの取材です!!」


「そういう事だ。
俺は愛しか眼中にないからな。」


すると、厨房から幾松が声をかける。


「愛、何にする?」


『あっ、幾まっちゃん!
とんこつ味噌ラーメン、チャーシューとメンマ大盛りで。』


「チャーシューとメンマはマケとくよ。
煮玉子もオマケしとく。」


『ありがと〜、幾まっちゃん!!』


愛はカウンターに座りながら、桂と花野アナに目を向ける。


『小太郎も人気なんだね。』


「ウチの店で取材なんて、迷惑なんだけどね。」


『何かを伝えたいのは分かったけど……。
あれじゃ何も伝わらないね。』


「そうだな。」


その時、エリザベスがボロボロで飛び込んできた。


『エリー!?』


「エリザベス!!
どうした、何があった!?」


「これは…どうしたことでしょう。
突如、謎の生物が取材現場に飛び込んでまいりました!!」


「謎の生物じゃない、エリザベスだ!!」


店の外に目を向けると、そこには真選組がいた。


「カーツラぁぁぁぁ!!
今日こそ、年貢の納め時だぜィ!!」


「しっ…真選組です!!
なんという事でしょう!
取材現場が彼等に、かぎつけられていたようです!!」


桂はテーブルで、真選組を押さえる。


「…というように、慌ただしい一日が始まる。
ちょうど頃合だし、そろそろ出るか。」


「え!?
これも予定に入ってるんですか!?」


「皆さん、二階の方から脱出しますんで…。
あの、キャメラマンの方は後から。
つっかえると、アレなんで。」


『キャメラマンって……。』


「ちょっとォォ。
何、人んちズカズカ入り込んでんの?」


幾松は呆れながら、愛に言う。


「真選組は知り合いなんだろ?
桂について行けば、逃げられる。
行きな。」


『幾まっちゃん……ラーメンが……。』


「ラーメンなら、また作ってやるから。」


愛はしぶしぶ桂の後を追いかける。
追いついた時、ちょうど桂が真選組の隊士を蹴った所だった。


「うわァァァァァァァ!!」


「…桂さん。
今、うわァァって言いましたよね。」


「かけ声だ。
うおりゃああの間違いだ。」


「いや、明らかにビビってま…。」


再び真選組の隊士達が駆けてくる。


「んまい棒、混捕駄呪!!」


桂と愛、花野アナはんまい棒の煙幕を使って逃げた。


――――――――――――


「愛さんも攘夷浪士なんですか?」


『んーん、腐れ縁っすよ。』


「ただ今、勧誘中だ。」


桂が振り向く。


「着いたぞ。」


桂は窓に足をかける。


「遅くなったな、スマン。」


「桂さん、それに愛さんも。
おはようございます!」


「今日はキャメラが来てるんだけれども、気にしなくていいから。
モザイクかけるから。」


「桂さん、これは?」


「攘夷志士同士の、情報交換所といったところか。
こうして活動の成果を報告しあう。
ちなみに、この時の肴は、んまい棒サラミ味だ。」


「サラミ味ですか。
私も好きです。」


『私はチョコ派っすね。』


「つまり、我々攘夷浪士の活動を端的に言えば、こういった情報を交換しあう事がほとんどと言っていい。
方々を駆け回り、集めた様々な情報。
まァ、主に宇宙情勢。幕府の機密などだが。

これらを交換しあい、徐々にその交換の場を高みにもっていく。
つまり、身分の高い者と意見を交わしあい説得し、やがては国を内側から変える。」


花野アナは、浪士達の話に耳を傾ける。


「付き合ってないと、いってるだろう!!
矢田亜希美ちゃんが、あんな男と付き合うわけ…。」


「宮部!現実を見ろ。
押尾学人は、男には嫌われているが、女にはモテるのは事実だ!」


「…桂さん。
アレは宇宙情勢なんでしょうか。
芸能スキャンダルで聞いた名前が……。」


「いい加減にしろ、貴様らァァ!!
俺はけっこう押尾学人、好きだぞ!
なかなかワイルドではないか!!
若い頃の火野正平を彷彿とさせる…。」


「カーツラぁぁ!!」


襖がいきなり開き、真選組が乗り込んでくる。


「真選組だァァ!!」


「んまい棒、鎖羅魅!!」


一行は窓から出る。


「桂さんんんんん!!
またですかァァ!!」


いつも尾行されていることに気づかない桂に、花野アナは全力の突っ込みを入れるのだ。
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