空色スパイラル2

□第百訓 鍋は人生の縮図である
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「(ちっ…。
愛に肉を食わしてやり、かつ俺も食べるためのスキヤキだったのに。
まさか、アイツにあんな顔を…。

でも、しょんぼりした顔も可愛い……。)」


「(今日は、いつも迷惑かけられてる愛さんに、肉を食べさせてあげたい。
いや…僕も食べたかったりするんだけど。
なのに、今日も愛さんに迷惑が……。

でも、しょんぼりした顔も可愛いなぁ……。)」


その時、神楽の腹が鳴る。


「ア…アレェ?
オ…オイ、神楽。
何、お前?腹減ってるの?」


「減ってないモン、屁だモン。」


「いやいや、今のは腹の音だった。
間違いないよ。

何?そんなにお腹減ってるの?」


「そ…そんなにアレなら、やっぱりやるか?
俺は別に、どっちでもいいけど。
どーする?」


「神楽ちゃん、無理しない方がいいよ。
僕もどっちでもいいけど。」


「…すいてるけど、いいモン。
酢昆布あるから。」


愛が気を利かそうとした、その時。


「バッキャロォォォォォ!!
育ち盛りが、そんなモンばっか食って、メシ食わねーと、どーなると思ってんだァァ!!」


『銀時…。』


「ホラッ!僕がよそってあげるから。
愛さんも。」


『…新八、ありがと。』


「いいの?」


「いいって。
テメーらのために、買ってきたつってんだろーが。
早く食えボケ、殺すぞ。」


神楽と愛は、皿に盛られたスキヤキを食べ始める。


「ウホン…しゃーねーな。
じゃっ、食うか。
別に俺は食いたくねーけど。
メンドくせーな、オイ。」


「もぉー、別に肉は食べたくないんスけどね。
腐らせるのも、勿体ないですからね。」


すると、テレビからカトケンが流れる。


「あっ、カトケン紅白また出てるヨ。

去年で消えるかと思ったけど、HGにキャラ変えて、また人気出たアルナ。」


『ホント、びっくりだよ。
てっきり、もうテレビで見ないかと思ってたもん。』


新八が箸を伸ばす。


「でも、アレだよね。
紅白に出場する事も、最早歌手にとってステータスじゃなくなってるよね。
それというのもさ…。」


しかし、箸が刺さったのは、茶碗のご飯にだった。


「アレ、火が弱くなってね?」


銀時の箸と新八の投げた箸が、鍋に迫る。

しかし、箸のつく前に神楽のくしゃみが、それを遮った。


「あっ、ゴメンアル。
私、カゼひいたかもしれないヨ〜。」


『大丈夫っすか?』


「ゴメンヨ、愛。
ちゃんと責任もって、鍋は食べるネ。」


神楽は、銀時と新八に黒い笑みを見せる。


「(ククク…。
悪いが、鍋も愛もアタイのもんだ。)」


そして、鍋を飲み込んだ。


「……おやおや、何だい。
先におっ初めてたのかィ?」


お登勢とキャサリンが入ってくる。


『お登勢さん、キャサリン。いらっしゃい!』


「つれないねェ。
仕事終わるまで、待ってろって言ったじゃないのさ。」


「コイツラガ、辛抱ナンテデキルワケナイデスヨ。
愛ガトメタノニ、他三人ガムリヤリ初メタニ決マッテル。」


『あはは…。』


お登勢が散らばった肉を見て言う。


「ちょっとォ、アンタらなんだい?
この肉…また豚肉でスキヤキかィ?

かァ〜、大晦日だってのに、泣けてくるね〜。」


お登勢とキャサリンが、コタツに乗り込んでくる。


『神楽、寝るなら布団…。』


「まあ、後でもいいだろ。」


「それにしても、大晦日ぐらいねェ。
アンタら、いいモン食わないとダメだよ〜。
散々な一年でも、最後にいいモン食えば、ちったァマシな一年に見えるもんさ。

今年は、ちょっと奮発して高いのを買ったからね。
うまいもん食って、うまいもん飲んで、パーッと新年迎えようじゃないか。」


お登勢とキャサリンが鍋に手を伸ばす。
そして、愛の皿に大量に盛ると共に、二人で食べ始める。


「愛は、たくさん食べないとねェ。」


銀時と新八は鍋に手を伸ばすことすら出来ない。

二人は逆転を狙い、お登勢とキャサリンの箸を掴む。


「何!?」


「だからこそ…あの戦いを無駄にしないためにこそ。
この勝負…。」


「負けるワケには、いかねーんだヨォォォ!!」


「いけェェェェ、神楽ァァァァァ!!」


「鍋レオンになれェェェ!!」


神楽は鍋を一気飲みする。


「…………なんか、乳くさくてイマイチ。
豚の方がいいアル。」


「てめェェェェェ!!ナメてんのかァァァァ!」


「出せェェェ!
今の全部、吐き出せェェェ!」


愛を除いた五人は暴れ始める。


『私たち、ハミられちゃったね。』


愛は定春に抱きつく。


『あぁ、定春あたたかい。』


第百訓 鍋は人生の縮図である
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