空色スパイラル2

□第九十九訓 サンタなんていねーんだよって言い張る奴こそホントはいるって信じたいんだよ
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銀時と愛は、雪の降る中、コンビニの袋片手に歩く。


「大体、なんでこんな寒い日に、こんな所まで。
肉まんおいとけや、腹立つな〜。」


『同感っすよ。
ほとんどのコンビニで、肉まんが売り切れてるなんて…。』


「あっ、あんまんも買っときゃよかったな。
俺、肉まんあんまり…。」


次の瞬間、雪で銀時は滑ってころぶ。


『だ、大丈夫っすか!?』


「…あーあ。
潰れちまったよ。」


「あーあ、潰れちまったよ!」


前から聞こえた声に、二人は顔を向ける。
そこには、潰れたソリとトナカイ、そして有名な赤いおじさんがいた。


「どーすんの、コレ!
お前のせいだよ、コレ!!

こんなソリ、メチャメチャにしちゃってさァ!!
もう、今年終わりだ、コレ!
全部、お前のせいだからな、コレ!!」


「ふっざけんなよ、クソジジー!
坂道下る時は、必ずソリから降りるってあう約束だっただろーがァ!!

こっちはもう、ソリを引いてるより、追われてるカンジだったんだよ。
スネにガンガン、ソリがあたってたんだよ!
血だらけなんだよ、もう!」


「そんなもん。
お前が、ソリを上回る速さで走ればいい話だろーが!!
トナカイだろーが!!あん!?

お前の親父は、そりゃあスゴかったよ!
坂道でもグングン、ソリを引っぱってさ。
そりゃあ、立派なトナカイだった!」


トナカイとサンタの言い合いは、ヒートアップする。

「アンタ、えらい親父を気に入ってるようだけどな。
親父は家で、アンタの悪口ばっか言ってたから!
言っとくけど!!」


「ウソつくんじゃねェ。
カールと俺は、主従をこえた戦友だぞ!!」


「いや、マジ言ってたって!
遺言が、【アイツ、ホントはヒゲ茶色】だったから!!」


「てめェェェェ!!
デケー声で言うんじゃねェ!!
クリスマスの時だけ、白く染めてるなんてしれたら、事だろーがァ!!」


「テメーで、全部バラしてるだろーが!!」


掴み合い始めたので、見ていた銀時と愛も止めに入る。


「オイオイ。ちょっとちょっと、おちつけって。
何やってんだ、アンタら。」


『こんな日に、喧嘩はダメっすよ!!』


「いだっ!!」


「てめえェェェ、何しやがんだ!!」





結局、おでんの屋台に入り、四人は座る。


「…ったく、いい加減にしなさいよ。
こんな夜中にさァ、ご近所の迷惑も考えなさいよ。

何があったか、しらないけどさァ。」


『こんな良い日に、喧嘩はダメだもん。
皆、幸せにならなきゃ。』


「いや、アンタらにボコボコにされたんだけど。」


「とりあえず、飲みましょうや。」


「つーか、おたく誰?」


「酒は、人間関係を円滑にするための潤滑油って。
かの徳川家康も言ってたような気がしたけど、気のせいだわ。」


銀時は親父に注文する。


「オイ、親父。
熱燗三本とお茶。
あと、オデン適当に。
お代は、このヒゲがもつから。」


「へい。」


「ヒゲって誰、まさか俺?」


「へい。」


『まあ、クリスマスプレゼントと思って、ここは一つ。
そんなに食べるつもりもないし、ヒゲさん。』


「へい。」


「もう、剃っちまうかな〜。
こんなヒゲ。」


「へい。」


銀時が話を元に戻す。


「で、何?
なんで、あんな喧嘩してたの?
つーか、おたくら何?」


「え?」


「運送業か何か、やってる方ですか?」


「いや…え?
けっこう丸出しじゃ。」


銀時と愛は顔を見合わせる。


「あの…規則で、あんまハッキリ言えないんだけど。
ソリに乗って、子供達に夢を届ける…。」


「義賊っぽいカンジ?」


「そーそーそー、そーいうカンジ。
それで、【サ】のつくアレ。」


「サタン?」


「惜しい!!
けど遠い!意味合い的には!!」


屋台の親父が、分かったという表情をする。


「フフッ、旦那。
余計な口挟んですいやせんが、俺はもうわかりましたよ。
ホラ、あれですよ。
ヒントは股の間にぶらさがってる…。」


「違うから!!何そのヒント?
一体どんな答えに結びつくわけ!?」


『さ…さ…さん…?』


「姉ちゃんも、必死で答え探さんでいいわっ!」


「まァ、まァいいや。
サンコンでも、サンタでも。」


「いや、一回言ったよ。
今一回、正解言ったよ。」


「要するに、夜中にあのソリに乗って、子供達に何かするおっさんか。」


「そうだけど、なんかヤなんだけど。
その言い方。」


すると、再び親父が閃いた顔をする。


「旦那、余計な口挟むようですが、俺はもうわかりやしたよ。

ホラ、この方達はソリに乗って、通り過ぎざまに恥部を露出する。
あの方達ですよ。」


「違ェェって言ってんだろ!
お前、何!?
ダンディな顔して頭ん中、そればっかか!!」
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