空色スパイラル2

□第九十八訓 ミイラ捕りがミイラに
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志村家の一室。
そこには隔離された銀時と愛がいた。


「暇だな。」


『暇っすね。』


『「…………。」』


ずっとこの調子で、暗い雰囲気になっている。


『「……あのっ…!」』


「悪ぃ。」


『いや、私こそ。
あの……銀時から、どうぞ。』


「いや…その…。
悪かったな、何か色々と。」


『銀時は、悪くないっすよ。
謝らないで。

それに、謝らないといけないのは私だし…。
皆に、たくさん迷惑かけちゃった。』


「愛…。」


『ダメだな…まだまだ私も弱いままで、あの頃と変わんない…。』


すると、銀時は愛の頭を優しく叩く。


「愛はダメじゃねぇよ。
だって、俺はお前にたくさん救われてるんだぜ。」


『銀時…。』


その時、襖が開く。


「愛、元気にしてたアルかっ!?」


「ジャンプ買ってき……。」


入ってきた神楽とお妙は、二人を見てポカンとする。


『ん、二人とも?』


「愛、大丈夫アルか!?
銀ちゃんに変なこと、されなかったアルかっ!?」


「銀さん、どういうつもりですか?
怪我人は怪我人らしく、大人しくしろよ、あぁ?」


神楽は銀時と愛の間に座り、お妙はコンビニの袋を振り回す。


『そうっすよね……。
この光景を壊したくないだけだもん……。』


愛の目尻に涙がたまる。


「愛、どうしたネ!?」


「銀さん、白状して下さい!
答えによっては……。」


「ちょっ、ちょっと待てって!
誤解、誤解なんだよっ!!
愛、何か言ってくれぇ!!」





それから数時間後。
現在は、銀時と愛に神楽が、ジャンプの読み聞かせを行っている。


「「何奴っ!!
おやおや、お前さんですか。
クックックッ、来ると思っていましたよ。
死んだ仲間の仇討ちというわけですか。
マスカットよ。」

「マリリンのことかァァァ!!
ブリーザぁぁ!!」」


神楽の棒読み朗読は、白熱していく。


「どかぁぁぁん、ビシバシビシ。
「ぐふっ」どぉおん!!
ガラガラ、プリプリ。
テン、プリッ。

ブリブリ、ブシャアアアア。
ガラガラゴシゴシ。
「あっ、また血ィついてる。」」


すると、銀時が先に突っ込んだ。。


「オイ…。
もう、なんか訳わかんねーよ。
ちょっ貸せ、もう自分で読むから。」


「ダメアル。
怪我人にジャンプは刺激的過ぎネ。
私が読んであげるネ。」


「だったら、もうちょっと状況がわかるように読んでくれや。
な、愛。」


『そうっすね。
せめて、どっちが優勢か教えてほしいかな……。』


すると、神楽はページを捲り、再び読み始める。


「「あはん、真中殿。
電気を消してくだされ。」

そんな西野の言葉も無視して、真中はおむろに西野にまたがり、獣の如く……。」


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!
いい!もういいって!
早い!お前にはまだ…。」


「何、勝手に動いとんじゃあああ!!」


すると、いきなり襖が開き、薙刀を持ったお妙が飛び込んできた。
薙刀は、銀時の布団に突き刺さる。


「もぉー、銀さんったら何度言ったらわかるの。
そんな怪我で動いたら、今度こそ…死にますよ〔殺しますよ〕。」



『…………。』


「すいませんけど、病院に入院させてもらえませんか。
幻聴がきこえるんだけど。
君の声がね、ダブって殺すとかきこえるんだけど。

いやいや、君が悪いんじゃないんだよ。
おれが悪いのさ。」


「ダメですよ。
入院なんてしたら、どーせスグ逃げ出すでしょ。
ここなら、すぐしとめられるもの。」


お妙は笑顔で言う。


「ホラッ!
今もまたきこえた、しとめるなんてありえないもの!
言う訳ないもの!」


『そうっすよ。
お妙に限って…。』


「銀さん、愛さん。
幻聴じゃありませんよ。」



お妙は薙刀を抜くと、茶碗を取り出す。


「そろそろ、おなかが減ったでしょ?
お料理つくりましたよ。

卵がゆを作ったんだけど、どうぞ。
でも動けないから、食べさせてあげないとね。」


「これは、拷問ですか。」


愛はおずおずと手を挙げる。


『私、食欲ないから。パスで。』


「そう……。
でも、そんな日もあるわよね。」


「あっ、俺も食欲が…。」


「食べないと元気になれませんよ、銀さん。」


「………はい。」


神楽は、お妙の持つ茶碗に手を伸ばす。


「姐御、私にやらして。」


「ハイハイ、神楽ちゃんはお母さんね。」


しかし、茶碗をひっくり返し、卵がゆは無惨に落ちていく。


「あーあ、こぼしちゃったアル。
ゴメン姐御。」


お妙は立ち上がり、銀時達に背を向ける。


「むこうに残りがあるんで、とってきます。」


「あっ!」


銀時と愛は、隙を見て飛び出す。


「動くなっつってんだろーが!!」


『「ぎゃああああ!!」』


銀時は左手、愛は右手に駆け出す。


「冗談じゃねェ。
こんな生活、身がもたねェ。」


『病院食のほうが、絶対にマシっす!!
もう、こんな生活は嫌ぁ!!』


しかし、抜け出そうと思っても、塀の上に柵が出来、出られなくなってしまった。


『「なっ。」』


声が被り、横を見ると。


『退!?』


「愛さん!」


そこには、忍服の山崎がいた。
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